卒業生へのメッセージ ~声優~ 潘めぐみさん
目の前にあることを大切に

潘めぐみさん
一つの作品が人生を大きく動かすことがある。声優で女優の潘めぐみさん(34歳、2012年芸術卒)もその一人だ。
11年、テレビアニメ『HUNTER×HUNTER』第2作の声優を選ぶオーディションで、100人を超える役者の中から主人公・ゴン=フリークス役に抜擢された。
ゴンがさまざまな試練や強敵と対峙しながら夢を追いかける姿に、影響を受けた人も少なくないだろう。
4月から新社会人になる卒業生たちへの応援メッセージを潘さんから聞いた。(取材=小泉真太郎、写真=臼井幸介)
運命的な出会い果たす
小学校低学年の頃に友人宅に遊びに行ったのが、全ての始まりでした。
そこで初めて手にした『週刊少年ジャンプ』。ちょうど連載が始まったばかりだった『HUNTER×HUNTER』と出会い、そこに描かれるありとあらゆる言葉、感情や感覚に魅せられては、我を忘れてのめり込みました。
その後、『HUNTER×HUNTER』のテレビアニメ第1作目のミュージカルも観劇。アニメのキャストの皆さんが、そのまま舞台に立って演じている姿に感銘を受け、お芝居の仕事に興味を持ちました。
芝居の道へと進む
中学生の頃、同じ芸術学部出身の母に連れられオープンキャンパスに行った時、学生の皆さんの生き生きとした姿に刺激を受けました。高校は本学に進学しやすい付属櫻丘高に入学。芝居をなりわいとしている母に「将来は演劇の道に進みたい」と決意表明したのもそのときでした。すると、母は賛成も反対もせず「困ったことがあれば相談にのるけど、なるべく自分の力でつかみとっていくようにしなさい」と自分のやりたいようにと促してくれました。
高校卒業と同時に、一般公募だった『櫻の園』のオーディションに挑戦し、女優デビュー。大学時代は女優業が忙しくなかなか授業に出席できませんでした。しかし一方で、芝居だけで生活していけるのか不安もありました。そんな中、支えになってくれたのは友人の存在です。相談ごとにのってもらったり、撮影で忙しいときは課題を手伝ってもらったりと大変助けられました。
憧れのゴン役に抜擢
大学4年の時に今の事務所に入所。2、3カ月後になんと、主人公・ゴン役のオーディションの話をいただいたのです。テープオーディションや掛け合い、そして歌唱力やフリートークの審査など、まるで作中でゴンが最初に挑むハンター試験のようでした。オーディションを受けながら頭のどこかで、違う役に選ばれるかもしれないと思っていましたが、電話でゴン役に決まったと報告を受けときは、本当に夢のようでした。現場ではベテランの先輩方に囲まれ、多くのことを学ばせていただきました。
当時の1話を見返すと恥ずかしい気持ちになります。しかし、あのときにしかできない発声や表現をしているので、今の私には当時のお芝居を再現することは難しいと感じることもあります。声をあてる仕事も舞台と同じ〝生もの〟。一度しかできない表現や掛け合いが生まれます。改めて振り返ると当時の自分が今一番に超えるべきライバルなのかもしれません。
誰かと共に経験を
声を吹き込むとき、私は演じる性別によって意識を変えるということはしません。一つコアとして持っているのは、思いやりです。喜怒哀楽の感情は自分一人の中からは生まれてきません。
自分以外の誰かから受け取るものだと思っているので、喜びも、悲しみも、怒りも全て、掛け合うべき相手を思いやると捉えて演じています。そういったさまざまな世界に触れることで、たくさんの人と出会い、さまざまな体験をすることで、経験となることがお芝居には重要なことだと思います。
悔しさを次に生かす
オーディションは受かることよりも、落ちる方が多いのです。これはどんなに活躍している声優さんでも同じこと。
私はそういった経験や感情もお芝居の糧にしています。不合格ならもちろん落ち込みはしますが、その悔しさや悲しさはお芝居の表現につなげられる。芝居をなりわいにするということは何でも肥やしにできる。そこが魅力的な部分だと思います。
何者にもなれる
声優はいろんなモノになれる。地球外生命体や金髪の美女も演じられる。可能性が無限大だなと感じます。私は特撮作品も大好きで、女優業を始めたときに戦隊もののオーディションを受けたこともあったのですが、残念ながらご縁がありませんでした。
ヒーローやヒロインになる夢は諦めていましたが、声の仕事の延長線上で、スーパー戦隊に変身させていただいたり、ウルトラマンになることができました。その時に何者にでもなれる仕事だと改めて実感したんです。
作品を見るきっかけに
私自身の知名度や人気は高くないと感じます。だからこそ、「潘めぐみが出演している」ということをきっかけに作品を見てもらえるようになりたい。そして、過去に出演した作品も見てもらえるような役者になりたいと思います。また、被災者から、私の声を聞くと元気になるという感謝のお手紙を頂きました。今後は、慈善活動にも積極的に参加していきたいです。
思いのままに生きる
学生の皆さんには今、目の前にあることを大切にして日々を過ごしてほしいです。学業や友人関係、趣味など、興味があること全てです。中には後回しできることもあるかもしれませんが、目の前にあることは、今必要なことだと思うんです。
私も大学生のときに勉強やサークル活動にもっと取り組んでおけばよかったと思うこともありましたが、学生時代に、さまざまな景色を見られる時に見ておけば、あのときの自分の選択は間違っていなかったと思える日がきっと来ます。限られた時間でやりたいことを取捨選択しながら、成功と失敗をたくさん経験して思いのままに生きてほしいです。
はん めぐみ 1989年東京都生まれ。2012年芸術学部演劇学科卒。8年映画『櫻の園』にて女優デビュー。11年にはテレビアニメ『HUNTER×HUNTER』第2作の主人公・ゴン=フリークス役で本格的に声優として活動。17年には第11回声優アワードにて助演女優賞を受賞。そのほか、テレビアニメ『【推しの子】』の有馬かな役など幅広い役を演じる。
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