【特集】―検証― 生成AI、どう向き合うか
あなたは生成AIを、どのように利用しているだろうか――。コンビニには生成AIが発案したスイーツが並び、就職活動では生成AIが面接官を務める。私たちの生活に浸透する一方、その利用を巡るトラブルや課題も絶えない。大学生にとっても、生成AIは身近な存在だ。レポート作成や情報収集、文章の要約など、学修現場でも活用の幅は広がっている。しかし、生成AIを利用して生み出された文章や画像の著作権はどうなるのか。そして大学は、生成AIとどう向き合っているのか。この特集では、学生の利用実態や著作権、情報の正誤判断、本学での取り組みといった視点から、生成AIを問い直した。(生成AI特別取材班)
偽情報の見分け方
日本ファクトチェックセンター 古田編集長に聞く
だまされやすい自覚を持つ
昨今、生成AIを使用したフェイクニュースや偽情報が急増している。正しい情報をどのようにして見分けるのか。インターネット上に流通する情報のファクトチェック(事実の検証)を行う「日本ファクトチェックセンター」の古田大輔編集長に話を聞いた。
AI進化で偽情報急増
生成AIの進化で誰でも簡単に事実とは異なる動画や音声を作成できるため、偽情報の数が圧倒的に多くなりました。その多くはSNSで発信される。インターネットに慣れている若い世代ほど、自分の情報リテラシーを過信してしまいやすいので十分に注意が必要です。
投稿前に自分で確認を
総務省の調査によるとディープフェイク(AIを用いて作った偽の画像、映像、音声)を「見破ることができる」と回答した人のうち、リテラシーテストで全問不正解だった割合は61・5%でした。つまり自信を持っている人ほど無自覚にだまされている可能性がある。また、偽情報は「だまされたら被害者、拡散したら加害者」になります。自分が信じている情報が本当に正しいのか、投稿する前にまずは自分で確認しましょう。
客観的事実を検証する
画像や動画であれ、細部を見ることでAIかそうではないかを判断することができます。例えば建物の影が太陽の位置と一致していない、看板の文字が崩れているなど。しかし、最近はAI技術が向上し、細部を見ても見分けることが困難になっています。その場合、周辺情報を調べることで検証します。
該当の時間に投稿されている出来事・内容は本当に発生していたのか、一つの匿名アカウントだけが流している情報は信ぴょう性があるのか。これらを検証することで情報の信頼性を確かめていきます。特別な専門知識がなくても客観的事実を検証することで真偽を判断することが可能です。
正しい判断は訓練必要
その情報が正しいかどうかを判断するには日々訓練が必要。日頃からニュースに関心を持ち、情報を自分なりに判断することで質の高い情報が得られやすくなります。学生という社会に出る最後の限られた期間までに、自分が生きていくための情報を獲得する方法を学んでほしいです。

ふるた だいすけ ジャーナリスト/ファクトチェッカー 2022年に日本ファクトチェックセンター編集長に就任。ニューヨーク市立大院News innovation and leadership修了。(提供=本人)
生成AIと著作権
福井弁護士・客員教授 Q&A
AIに譲らない「領域」を
生成AIを利用する上で問題となってくるのが「著作権」だ。同権利をめぐっては、実際に国内外で数多くの事案が訴訟に発展している。知らずに他者の権利を侵害しないように生成AIを利用するためには、正しい知識が不可欠だ。知っているようで知らない「著作権」について、生成AI利用の観点から、本学芸術学部客員教授の福井健策弁護士(エンタテインメント・メディア法)に話を聞いた。
Q そもそも「著作権」とは。
A 一言でいうと、さまざまな作品表現を、創作した人に無断で利用することができないように定めた権利のことです。言わば、情報のコントロール権。情報に対して働く一番中心的な権利と言ってもいいでしょう。人が創作したと言える情報、創作的な表現について、そのクリエイターに一定の独占権を与えるものです。
Q 著作権を侵害される著作物にはどのようなものがあるか。
A 文章、映像、音楽、写真、イラスト、漫画―あらゆる著作物は侵害される可能性があります。人間が生み出してきた「知」と言えるものは全てAIの学習対象であり、ある意味で模倣対象です。
特に今のトランスフォーマー型といわれる生成AIは、基本的に人間がこれまで発してきた情報を模倣している存在であって、無から有をつくっているわけではない、と言われます。AIはあらゆるものを学習し模倣するので、あらゆるものが理論上は侵害の対象になり得るのです。
Q 生成AI使用時に留意するべきポイントは。
A 第一に自分が使用する生成AIがどんなものであるのか、その性質を理解すること。学習や権利侵害へのセーフガードの有無やその程度を知ることが重要です。第二に入力する情報の取捨選択。入力した情報が学習され、どこか自分の知らないところで出力される可能性があるからです。
さらに、それらの可能性を常に意識すること。生成したものが著作権を侵害していないか、画像検索などを活用して自分でも確認することが重要です。そして最後に、プロンプト(指示文)を保存しておくこと。何かトラブルが生じた際に、自分が何を入力したかを証明できれば意図的な模倣ではないことを説明できます。これらの対策により、知らず知らずのうちに著作権を侵害してしまうリスクをかなり軽減できるでしょう。
Q 生成AIに画像を「食わせる(読み込ませる)」のは著作権侵害に該当するのか。
A 基本的には著作権侵害ではないとされていますが、例外が二つあります。「既存の創作物にそっくりな表現を生成させるための学習」と「権利者の利益を不当に害するような学習」です。作成数が限られる通常の二次創作などとは異なり、生成AIを利用すると、際限なく出力されてしまう。文化庁の審議会でも議論が交わされ、結果として「作風の模倣のための学習は著作権侵害には当たらない」という見解にいったん落ち着いています。しかし、アメリカではAIと著作権をめぐる裁判が120件以上も起こっており、作風を学習させることに関しても意見は真っ二つに割れています。
Q 個人利用と学業での利用、どこまで許されるのか。
A 個人利用においては著作権法30条の私的複製により認められています。ただし、あくまで個人利用。SNSへ公開するなど、多くの人の目に留まる形での使用はできません。学修面においても、例えば卒業論文での取り扱いには注意が必要です。
Q 生成AIから創作物を守るには。
A 生成AIに限らず従来の「検索」では、クローラーというウェブ上の情報を自動収集するBotが使われています。多くのクローラーはウェブサイト内の指示文に従うようになっているので、例えば無断学習を防止する対策をとっているプラットフォームに作品をあげることである程度は防ぐことができるでしょう。
Q 生成AIを今後どのように活用していくべきか。
A サポートツールとしての期待は大きいですが、人間はサボりたい生き物。何もかもAIに任せ過ぎれば、人間としての自分がいる意味が問われる事態になりかねません。では「AIに譲り渡さない自分の領域」とは何か。その選択こそが、これから皆さんの人生や人間の生存を左右する重要な分岐点になるように思います。

ふくい けんさく 日本・ニューヨーク州弁護士。1998年コロンビア大学修士課程修了。2009年より本学芸術学部客員教授を兼務。骨董通り法律事務所代表パートナー。
本学における取り組み
中村准教授に聞く
正しい知識を持って使うことが重要
本学は今年4月1日付でデジタル環境の整備や学生一人一人の豊かな学び、安全で高度な教育研究を実践する中心機関として「情報イノベーションセンター」を設置。それに伴い、教育機関向けの有償版生成AIアプリケーション「Google AI Pro for Education」を全専任教職員へ導入した。そこで学内におけるAI活用の動向や課題、今後の展望について、情報イノベーションセンター教学情報担当の中村文紀准教授(教育工学)に話を聞いた。
教職員のAI理解促す
本学では現在、学生向けにMicrosoftの「Copilot」、Googleの「Gemini」といったエンタープライズ版AIツールを提供しています。しかし、一部で適切ではない利用が見られることが課題でした。
こうした現状を受け、まずは教職員から利用方法やポテンシャルを理解することが不可欠であるとして、全教職員への有償版の「Google AI Pro for Education」の導入を決定した。
さらに導入するだけで終えるのではなく、解説動画の公開や定期的なオンライン講座も開催。実際の業務現場では、教員による授業資料の作成や職員による議事録作成など、業務効率化が進んでいます。
AI使用リスクに注意
AIで気をつけなければいけないことは、大学が管理・把握をしていないAIサービスを個々に利用する「シャドーAI」の問題です。本学の管理対象外となるツールを利用した場合、トラブル発生時に大学側での対処が困難。また、AIが事実と異なる誤った情報を提示する「ハルシネーション」現象や、AIの情報を信じ込み過ぎてしまうことも問題視されています。一般的なAIではインターネット上にある莫大(ばくだい)な情報からランダムに情報を提示してくることが多くあります。信ぴょう性の高い情報を得るためにも、プロンプト(指示文)を正確に組み立てることが重要。ペルソナ(自分がどのような立場なのか)、タスク(何をしてほしいのか)、制約条件(出力形式等のルール)を明確にし、対話を重ねながら完成させる必要があります。
新たな創造手段に使う
本学の教育理念である「自主創造」の観点からも、AIの活用は有効です。AIは答えを教えてくれるものではなく、新たな創造をするための手段として使うものです。AIの活用によって生まれた時間を、より深い学びに充ててほしい。今年3月末に「生成AIの利活用に関する注意事項」を全学生に通知しましたが、学部・学科によって授業での利用範囲が異なります。学生が使いこなせる環境づくりを目指していきますが、自らAIについて学んでくれる学生も増えてほしいと思います。
学生意識調査 学年別に分析
本紙5月号で実施した学生意識調査の生成AIツールに関する結果を基に、「生成AIの使用頻度」「どのように使用しているか」について学年別に分析した。
学年進むにつれ 使用に積極姿勢

「生成AIを使ったことがあるか」との質問について、1年生(83人)、2年生(175人)、3年生(173人)、4年生(42人)の計473人を学年別で分析した。
「よく使っている」と回答した学生は全体で最も低い1年生でも半数近い45・8%(38人)。次いで2年生が50・9%(89人)、3年生56・6%(98人)、4年生59・5%(25人)と、学年が進むにつれ生成AIの使用が積極的になる姿勢がうかがえた。
また、1年生の中で「使ったことがない」「1、2度使ったことがある」と回答した学生を合わせると19・2%(16人)。2割近くの1年生が使用に慎重姿勢を示した。理由として「使い方が分からない」との回答以外に、「自分でどうにかしたい」と、生成AIに頼らない姿勢で臨む学生もいた。
思考補助に活用 高学年ほど多い

生成AIツールを使用する目的として最も多かったのが「論文・レポートを作成する際の補助」で、1年生45・8%(38人)、2年生53・1%(93人)、3年生57・2%(99人)、4年生57・1%(24人)。
続く「アイデア出しのサポート」は1年生41・0%(34人)、2年生45・7%(80人)、3年生54・3%(94人)、4年生50・0%(21人)との回答だった。
どちらも3、4年生の回答が半数以上に達している。卒業論文の構想や就職活動のエントリーシート作成など、多角的な発想や解決策が必要とされる高学年になるほど需要が高いようだ。
実践的な活用法 1年生に未熟さ

生成AIを「文章の校正」のために使用している1年生は12・0%(10人)で2年生が28・6%(50人)。「文献の要約・解説」と回答したのは1年生27・7%(23人)、2年生37・7%(66人)だった。
学修内容の専門性が高まる2年次への進級を機に、学修ツールとしてより実践的に活用していることが分かる。一方で、「どう使いこなすか」を十分に習得できていない1年生との間に実践への壁があるようだ。タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する学生にとって、生成AIは効率的に学修するための手段として定着しつつあるだろう。
日大生のAI活用術
生成AIは、学習での利用も広まり、多くの学生にとって無くてはならない存在になりつつある。本学の学生はどのようにAIを活用し、何を注意しながら使っているのか。四つの質問について、学部の異なる3人に答えてもらった。
Q1.メインで使っているAIとその理由は
Q2.「専門の勉強」で一番役立っている使い方は
Q3.勉強以外で役立っている使い方は
Q4.使う上で「ここだけは頼り過ぎない」と決めているマイルールは
疑問を解消する相棒
A1 メインで使っているのはGoogleの「Gemini」です。Googleの他の有料プランもセットで付くのでおまけの恩恵が大きい。学割で料金も安く、総合力の高さが最大の魅力です。
A2 授業の要約や予想問題集を作らせたりしていますが、これは他学部の学生もやっていることだと思います。理工学部ならではの使い方だと、シミュレーションモデルの生成です。数式や物理現象を伝えると、複雑な動きを可視化した図を提示してくれるので助かります。以前は細かく指示が必要でしたが、今は少し言うだけで、こちらの意図をくんで計算してくれます。
A3 日常の困りごとの相談役として愛用しています。冷凍した食品の調理方法やパソコンのシステム設定、電子部品選びなど。かつての音声アシスタントより格段に高度な対話が可能になったと感じています。
A4 以前よりは減りましたが、「ハルシネーション(AIが間違った情報を正しいように言うこと)」はあります。計算などは必ず自分でも検証し直しています。画像生成も注意が必要。権利侵害や他人に被害が出るような使い方は絶対にしない。法律と倫理を守って活用しています。
鈴木 郁宏さん(理工・精密機械工3)
自分軸に学習へ応用
A1 「ChatGPT」を使用しています。周りが使い始めたのがきっかけ。過去のやり取りから自分の性格や傾向を学習しているため、自分に合った回答をしてくれていると感じます。
A2 レポートや課題の手助けをしてもらいます。特にメディア系の授業では専門用語が出てくることが多いです。受講人数が多いと先生に直接質問するのはハードルが高いため、気軽に聞ける生成AIを使用します。また検索ツールで調べると、知りたい情報が載っているサイトを探す手間がかかります。一方で、英単語の意味など一問一答で調べられるものは検索ツールを使用し、使い分けています。
A3 電車の乗り換えに使用。「何号車に乗るとスムーズに乗り換えられるか」とよく質問しています。また、サークルのチーム分けにも使いました。番号が重ならないように指定すると応じてくれるので便利です。
A4 自分でできることは自分でやります。例えば、レポートの書き方は質問しますが、実際の文章は自分で書きます。全て頼ってしまうと、大学に通い学んでいる意味がなくなってしまうと思うからです。生成AIを使用する上で「ベースは自分」ということは守りたいです。
藤野 優希さん(法・新聞2)
人間味が強みになる
A1 メインで使っているのは「ChatGPT」。他のアプリとの連携がしやすく、UI(ユーザーインターフェイス)が分かりやすいところがお気に入りです。
A2 物語を要約する際によく使います。物語の要素の取捨選択が効率よくできるため、レポートをまとめる際に便利。例えば、「(作品名)について要約してください」や「記事を〇字で要約してください」という質問で使用することが多いです。
A3 私の場合は、趣味や就活など勉強以外での使用が8割。特に、メールの返信文はAIに書かせることが多いです。丁寧な言い回しなどはAIに丸投げするのが、一番ミスが少ないと思います。また、就活の際に志望動機を整理するのにも役立っています。将来なりたい姿となぜその業界を選ぶのかを、私の価値観とマッチングさせて今後のキャリアビジョンを提案してもらいました。
A4 AIに聞く前に、まずは自分の頭で考える癖をつけることを意識しています。さらに、五感的な情報や感情的な情報は人間が持っている強みだと思うので、AIのテンプレート的な回答と差別化するために、これまでの自分の経験や体験をより反映させるような質問をしています。
加藤 慶汰さん(芸術・文芸3)







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