知の世界を探索➂未来博士工房

本学の研究フィールドを取材する「知の世界を探索」。3回目は理工学部の独自プログラム、未来博士工房を紹介する。
文科省特色GPに採択
未来博士工房とは、座学で得た知識を実践し、学生の自律性と創造力を呼び覚ます場だ。
2007年に「未来博士工房による自律性と創造力の覚醒」が、文部科学省の特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)に採択。航空宇宙、ロボット、PC工房を中核としてスタートした。09年には同省の「気づかせ教育による社会還元力と学士力保証」にも採択。活動の幅が拡大し、現在の工房の姿となった。
八つの専門工房が稼働
現在は交通まちづくりやブリッジなど計八つの専門工房が存在する。各工房を支える「共通工房」は本格的な工作機械だけではなくミーティングスペースも備え、分野の垣根を越えた活動を生む場として機能している。
最大の特徴は学生の主体性にある。プロジェクトは学生自らが起案・計画。たとえプロジェクトの途中で失敗が起きても、それを糧にPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回して改善を続ける。この繰り返しが、社会で通用するコミュニケーション能力や課題解決力の育成に役立つ。
惑星探査を独自に構想

ロボット工房の活動の様子
ここで、同工房での具体的な実例を紹介する。ロボット工房の惑星探査ローバープロジェクトでは、未知の縦孔(月や火星の表面に見られる穴)探査に向け、学生自らが独自のコンセプトを構想。単一の機体ではなく、運搬や探査など役割の異なる複数の機体を連携させる画期的なシステムで挑んでいる。製作は困難の連続だ。各担当の理想がぶつかり、機体が動かない壁に直面。高度な計算が必要な場面では、自ら勉強してアイデアを形にしてきた。同プロジェクトの目標は来年3月に開催する鳥取ローバーチャレンジへの出場。代表を務める冨樫一仁さん(精密機械工3)は「結果を残し、大会出場のノウハウを引き継ぎたい」と語る。
モデルロケットを空に

日大ロケット研究会の活動の様子
航空宇宙工房の日大ロケット研究会は火薬を用いたモデルロケットをゼロから製作し、打ち上げまでを一貫して行う。チームでのスケジュール管理や学業との両立といった困難を乗り越え、大空へと打ち上げが成功した瞬間の達成感は計り知れない。超小型人工衛星の開発に携わり、実際に宇宙へ打ち上げている衛星開発プロジェクトとの連携も活発。同プロジェクトが開発した機器を載せて打ち上げを行うなど、互いに刺激を与え合っている。
社会に還元される技術
工房の活動はキャンパス内にとどまらない。交通まちづくり工房が近隣道路の速度制限のシステムを構築し、ブリッジ工房が全国の橋の清掃に赴くなど、学生の活動は実社会に直結している。日大ロケット研究会は千葉県船橋市の小学生へロケット教育を行う社会貢献を果たしている。同研究会代表の榎本大和さん(航空宇宙工3)は「教えることで私たちも得られるものがある」と笑顔を見せる。
努力と成果をたたえる
初年次から3年生を対象に、学業と工房活動の両面で顕著な成果を収めた学生には「学生博士賞」が授与される。各工房の厳しい基準をクリアした受賞者の多くが、その後大学院へと進学している。
未来博士工房の委員長を務める航空宇宙工学科の髙橋賢一教授(ロケット推進工学)は「今後は企業や他学部との連携など、外との関わりをより強めたい」と展望を話す。
同工房が目指すのは、広く社会に通用する「創造型技術人」の育成だ。社会の課題に気付き、自らの技術で応える。学生たちの実践の積み重ねが、より良い未来を創る原動力となるはずだ。 (取材=宮野翔大)







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