知の世界を探索 ①NUBIC
日本最大級の総合大学である本学の強みの一つとして、多様な研究活動がある。そこで本紙では5月号から本学の研究フィールドを取材し、社会の発展につながる「知の世界」を連載していく。第1回目は日本大学産官学連携知財センター(NUBIC)を紹介する。
「TLO第1号」に承認
1998年に大学、高等専門学校等の研究成果を民間事業者へ効率的に技術移転することを目的に「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(TLO法)」が制定された。
これを受け、本学は同年11月にNUBICを設立。同年12月には文部省(現・文部科学省)と通商産業省(現・経済産業省)の承認を受け、わが国の承認TLO第1号として活動を開始した。
産官学連携推進を支援
NUBICは民間企業(産)、大学・研究機関(学)、国・地方自治体(官)が相互に連携し、技術開発や新事業の創出を目指す産官学連携を推進。主に企業と大学の連携を行うための業務を担っている。本学の研究者約2600人と企業との共同研究から産み出される成果を実用化し、知的財産と技術移転をワンストップでサポートする役割だ。また、製品等の実用化の過程で発生する権利関係の取得や活用も進めている。
実用化された製品のアフターフォローも忘れない。製品の展示や紹介を行うイベントを開催。特許等の権利関係の管理やさらなる研究の発展のサポートも行っている。
特許後3年で実用化
NUBICが進める研究実用化の製品群は理系分野の製品はもちろん、経済学分野の統計や芸術分野のデザインなど実に対象が幅広い。
実用化への流れは以下の通りだ。まず、本学の研究者から提出された発明等届を基に、社会実装の可能性や権利化の必要性を検討。その中から選ばれた研究成果を特許出願する。
次に研究成果を実用化するため、連携できる企業を探す。その際、国や本学が開催する産官学連携イベントなどで研究内容を企業等へ直接説明し、アピールすることが多い。研究に関心を持った企業が研究者へ直接連絡するケースや、インターネットを通じて問い合わせを受けることもある。その後、企業との交渉を経てライセンス契約を結ぶ。
特許権取得後、約3年を目安に実用化が進んでいく。しかし、近年ではデジタル分野などでは特許取得後すぐに製品化される例も多い。反対に医薬品系の研究では実用化まで10年ほどかかる場合もあるという。
世界初の歯科用CTも
実用化後も製品を紹介するイベントへの参加や企画を通じて、普及を図っていく。さらに、他研究者との共同研究へ発展する場合もあり、新たな研究展開へ広がることもある。
NUBICの実用化製品の中には、私たちに身近な装置もある。歯科病院の多くで使われている「歯科用CT」だ。2001年に本学が世界で初めて実用化し、今では日本だけでも2万台以上の稼働実績をもつ。コンピューターを駆使してⅩ線を360度全方向から当てることで、人間を輪切りにした画像が撮影でき、顎骨や歯の様子を立体的に観察できる。
実用化に学生も関わる
「研究成果の実用化」と言っても、学生にとっては想像しにくいかもしれない。しかし、本学の産官学連携では、多くの場面で学生が関わっているという。学生が研究の協力者として参加するケースや、製品化の過程で携わる場合、学生のアイデアが研究者や企業の目に留まり、実用化につながる例などさまざま。研究に関わった学生は特許出願時の発明者欄に掲載されることもある。
実際に学生が参加した例として、理工学部船橋キャンパスにあるマイクロ機能デバイス研究センターの医療用マイクロロボットが挙げられる。大腸カメラの先端をロボット化することで腸管内での診断や治療を可能にすることを目指している。実用化に先立ち、小型モーターを使って大腸内で自由に移動するための仕組みを学生が設計し理論値計算も実施した。現在、企業から金属加工技術やモーターの提供を受け、実用化に向けて研究が続いている。
知的財産の認識不可欠
本学には多くの研究者が在職し、多様な研究成果をあげている。しかし、特許出願の割合は比較的少ない。
NUBICの加藤浩副センター長は「研究者が知的財産の認識や意識を持ってもらいたい」と話す。
自身の関わったプロジェクトを研究段階で終わらすのではなく、産官学連携という形で製品化し、社会課題の解決など多岐にわたり活用されることが21世紀の日本の発展にもつながるはずだ。
(取材=小杉 妃)







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