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卒業生インタビュー 作家・嶋津輝さん

今の輝きをもっと自覚してほしい

 大正から昭和にかけて東京・上野のカフェーで働く女性たちを描いた『カフェーの帰り道』(東京創元社刊)で、第174回直木賞を受賞した嶋津輝さん(56歳、1992年法学部法律学科卒)。41歳の時にリーマンショックの影響で仕事が減ったことから小説教室に通い始めたのが小説家に踏み出すきっかけだ。会社員から作家へ転身し、3冊目で直木賞を手中にした。そんな嶋津さんに学生時代の思い出や学生へのメッセージなどを語ってもらった。(取材=外﨑功・写真=小杉妃)

テニスが青春の1ページ

 法学部への進学はいくつかの理由が重なりました。クラスメートが法学部に進むことを聞いて楽しくなりそうだと思ったり、水道橋が通いやすかったというのもあります。

 テニスサークルでの活動がとても楽しかったです。厳しかったわけではないですが、毎回練習に参加していました。大会に出ても結果はさっぱりで、自分の運動神経の悪さと向き合う日々でした。

 サークルでは広報係として年に数回の広報誌の制作にも携わりました。当時は〝お笑い担当〟だった一面もあり、自己紹介欄でいかに人を笑わせるかを考えていました。広報誌では「助手席で隣に乗ってほしい女子の先輩ランキング」で1位になったことも。トークが評価されたのでしょう。今となっては青春の1ページです。

学生時代が今の自分つくる

 勉強はそこそこだったと思います。第2外国語はフランス語を履修しましたが、男性名詞と女性名詞で挫折し、4年生まで引きずりました。先生も第2外国語で卒業できないのはあまりにもふびんだと感じたのでしょう。最後の試験はフランス語の読みを片仮名で書く簡単な問題。「先生ありがとう」と思いながら「トレビアン」と書きました。

 授業では法医学がとても人気で印象に残っています。事件現場がスライドに映される授業で「キャーキャー」言ってしっかり見ていました。

 実に楽しい学生時代でしたが、自分の人格形成に必要な時期だったと思います。学生時代の自分なくして今の自分はなかったので、仲間や先生には感謝の気持ちでいっぱいです。

作品通して読者励ませた

 受賞作についてはサイン会をした際に読者の方からお手紙をいただいたり、直接感想を聞いたりしました。サイトにあるレビューの中には辛口な感想もあるので、かなり細目にして良さそうなものだけしっかり見ておきます。

 「励まされた」や「明日から頑張ろうと思った」との感想を聞くと、これまで人の役に立つ人生を送ってこなかった自分としては、それだけで十分うれしい思いになりました。

 作品の中で戦争の時代を書くということは、反戦の意思表明だと思っています。読者には戦争の悲惨さを感じてほしい。また、ストーリーよりも人や場所を細かく書きたい気持ちが強いので、受賞作では女給さんたちの小さな人生ストーリーを楽しんでほしいと思います。

自分そのものがブランド

 就活生だった時は何も考えていませんでした。キャリアを積みたいと思っていたわけでもなく、周りが普通の会社に入るから自分も入るぐらいの感覚で選びました。その仕事があまり自分に向いていないと思ったり、つらいことばかりで楽しくなかったり、やってみたらだめだったりしたこともありました。しかし、こうして小説を書くようになってから振り返ると、全部が無駄ではなくて意味があったと思えました。最初から目標を定める生き方だけではなく、流れに身を委ねてみることもありだと思います。

 学生の皆さんは今のままでいてほしい。ブランドものを身に着けなくても自分そのものがブランドですから。今の輝きをもっと自覚してほしいなと思います。

しまづ てる 1969年東京都生まれ。92年本学法学部法律学科卒。2016年に『姉といもうと』でオール読物新人賞を受賞し、19年に同賞受賞作を収めた『スナック墓場』でデビュー。23年に『襷がけの二人』で直木賞候補作に選ばれ、今回2度目のノミネートで同賞受賞。

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