工・生産工 共同研究で世界初
量子インターネット実現へ
工学部の俵毅彦教授(光物性)と生産工学部の石沢淳教授(光エレクトロニクス)はNTTとの共同研究で、通信波長の光に共鳴する電子とギガヘルツ超音波のハイブリッド状態を生成することに世界で初めて成功した。次世代の量子インターネット実現に向けて画期的な研究成果として注目される。
将来のインターネットでは長いコヒーレンス(電子の波が位相を保ち続ける)時間を持つメモリが必要であり、「エルビウム(Er)」という元素が着目されているが、絶縁体のため電気的な制御や通信波長帯に共鳴させることが困難だった。
俵教授らは、表面弾性波(物体の表面付近に集中して伝搬する超音波)を作る素子と石沢教授が長年研究してきたレーザー光の周波数を安定させる技術を用いて、通信波長帯に共鳴する電子とギガヘルツ超音波のハイブリッド状態を生成することに成功。さらに、この状態から、Erの光応答を超音波で低電圧制御することを可能にした。
この制御方法を省エネ量子光メモリ素子へ応用することで、地球規模での量子インターネットへの実現が期待される。
量子インターネットとは、光の波動性を利用した現在のインターネットと比べて、量子力学的な粒子性を利用することで、第三者に情報を盗まれることが不可能な安全性の高い通信を可能にするインターネット。
俵教授らはNTTでの研究経験を持ち、12年前から研究を進めてきた。さまざまな技術を取り入れ、改良・工夫を行い5、6年前から成果が出始めたという。
俵教授は「今のメモリではまだまだ効率が悪い。省エネで実用的な量子光メモリを作りたい」と今後の展望を語った。
今回の研究成果は、アメリカの科学誌「Physical Review Letters」に、1月18日にオンラインで掲載された。
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研究室で学生と光学実験を行う俵教授
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