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「#五十三家おごってやるよ」プロジェクト 日芸OB62万円集める 江古田のラーメン店救済で

学生が賞味した「ラーメン並」
※学生証提示とツイッターでハッシュタグ「♯五十三家おごってやるよ」を付けたツイートを投稿し、
店員にツイート画面を提示した学生に味玉をトッピングしています。

 

コロナ禍の暗雲が全国を覆い始めた3月初め、芸術学部のおひざ元・江古田(東京都練馬区)のとあるラーメン店が廃業の瀬戸際に追い込まれていた。江古田駅前に店を構える「横浜家系らーめん五十三家(いそみや)」。創業10年と歴史は浅いにもかかわらず、日芸生から熱狂的に愛される店だ。
「五十三家危うし」の報に接した卒業生の柏原平志朗さん(2015年芸術卒)が即座に動いた。学生時代は同店に「週に一度は通った」というIT企業勤務の柏原さんは、SNSを通じ知り合いの日芸OBに「1人1万円」の出資を募った。集まった資金を「前払い金」として店に渡し、現役の日芸生たちに学生証の提示で1杯720円の「ラーメン並」が振る舞われる仕組みだ。名付けて「#五十三家おごってやるよ」プロジェクト。3月中旬以降、徐々に賛同者が増え、6月初めには62万円が集まり同店はかろうじて廃業を免れた。
プロジェクトによるラーメンの提供は3月24日に始まった。6月初旬までに約260人の日芸生がこのプロジェクトの恩恵にあずかったという。
全てのきっかけは、「五十三家」の店主五十嵐恵三さん(53)が3月10日に発した、廃業を示唆するツイッターだった。「いきなり閉店して常連の学生たちに最後のあいさつができないという事態だけは避けたかった」と五十嵐さんは言う。
この投稿を見た柏原さんが同級生だった友人に連絡。「ラーメンを切りよく計算して1杯1000円。1万円で後輩に10杯おごれるとしたら1万円出すか」。友人2人が「全然いいよ」と答えたことでプロジェクトは動き出した。
プロジェクトには20代から60代まで幅広い年代が参加した。五十三家に行ったことがない卒業生まで「母校への恩返し」と賛同してくれた。
3月中旬にインスタグラムで有志を募り10万円を集めた。3月17日には柏原さんが店を訪ね、このプロジェクトを直接説明した。五十嵐さんは「あまりにもおいしい話。詐欺かも」と疑ったという。しかし、柏原さんの強い思いが伝わると、「愛されているのだと分かり、涙が出そうになった」と振り返る。
実は同店は昨年12月に同じ江古田から現在地に移転したばかりだった。その際の設備投資費などの返済もあり、年明けから営業時間を延ばして奮闘していた矢先にコロナ禍に見舞われたのだ。

干天の慈雨
柏原さんの提案は、食材の仕入さえ危ぶまれた当時の「五十三家」にとって、まさに干天の慈雨となった。
柏原さんは「貧乏学生の自分たちは、手ごろな値段の絶品ラーメンと無料ライスでお腹を満たした。養ってもらったお店を残せてうれしい」と笑みを浮かべる。
五十嵐さんは「感謝を胸に、安くておいしいラーメンをお腹いっぱい食べてもらえるよう頑張りたい」と語る。
コロナ禍はまだ終息の兆しを見せない。外出自粛要請は解除されてもなお、多くの飲食店の先行きは厳しい。柏原さんは、愛する「五十三家」を「コロナ終息まで支援する」と話している。

 

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