大貫学長に学びの未来を聞く
1つの分野を究めれば何でもできる
おおぬき しんいちろう 57歳。1991年本学理工学部卒。2000年本学大学院理工学研究科博士後期課程修了。15年本学理工学部教授。22年本学副学長。博士(工学)。專門分野はエレクトロニクスシミュレーション。今年4月、電気学会から「業績賞」を受賞。
大貫進一郎学長が就任して1年余りがたった。各学部に出向き学生との対話を積極的に進める一方、総合大学の専門性を生かす教学の取り組みに注力している。本学と学生をどう導いていくのかを聞いた。
―教学領域における課題にどう取り組みますか。
キャンパスが点在していることにより、学部を超えた学生の連携が難しい点が課題です。学生が交流の場を強く望んでいることは把握しています。どのように有機的につないでいけるのか。学長として常に考えています。
ただ、分散型キャンパスは、強みにもなりうると考えています。今はオンラインで容易につながることが可能です。これにより、各キャンパスがそれぞれの地域で連携し、さらに同時配信などを活用すれば、遠距離のキャンパス間でも交流を深めることができます。海外ではメインのキャンパスを持たない大学もありますし、最近では通信制の大学も注目されています。分散型キャンパスは現代において、ある意味では最先端と言えるのかもしれません。このように、今の課題を強みに転換していくことを目指します。
―学生との触れ合いを通じて感じたことや気づきは。
総合大学であるがゆえの、キャラクターの多様性を改めて感じました。その上で素直でやる気のある印象を持ちました。専門分野以外にも興味をもち、実際に活動する学生が全学的にみても多いと知りました。
また、学外の視点で言えば、理事長・学長セレクト講座で講師を務めて頂いた方々は「質問も積極的で的確だ」と口をそろえて言います。客観的に見ても、将来性を感じる良い学生たちだという評価を頂いています。
―新科目「データサイエンスの世界」について教えてください。
4月に学則が変わり、今年度から初年次向け新科目「データサイエンスの世界」を全学設置しました。8月の夏期集中オンライン科目からスタートします。高等学校のカリキュラムも変わってきていることもあり、総合大学だからこそ文・理、医歯薬系を問わず、学んでほしい。各自、専門分野を身に付けることを最優先に、その手助けとしてうまく活用していただけたら幸いです。この科目の全学導入により、文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」に来年度申請する予定で進めています。
―昨年12月に開始した「N.教学イノベーション推進プロジェクト」の評価は。
一つのテーマに沿って、学部を越えて学生が学術的に議論する場の提供を目的に企画しました。募集開始から2日ほどで定員が埋まるほど、多くの学生が知的好奇心を持ち、学部横断で交流したいという意欲を強く感じました。実際、さまざまな切り口で議論をしている学生の様子が見られ、とても有益な場であったと考えています。参加した教職員の中でも大変好評で、現在は第2回目の企画準備をしている段階です。
―学修管理システム(LMS)の全学導入はどこまで進んでいますか。
現在は12学部と正付属校で利用されています。「Canvas LMS」は世界の名だたる大学が採用しており、データに基づいた学修・学習分析に非常に強い。「GPS―Academic」等の他の教学データとも連携した分析が可能で、付属校生で言えば、基礎学力到達度試験の学習に利用することができます。日本最多の学生数を誇る大学でありながらも、学生一人一人の最適な学修の提供を目指し、全学導入を推進しています。
―学生に伝えたいメッセージは。
将来どんなキャリアを築きたいのかを意識しながら、自分の専門性を深めていってほしいです。専門を学んでいるのだから、進路はそれしかないと考える学生をよく見かけますが、私は一つの分野を究める力があれば何でもできると信じています。他分野に挑戦する際も、自身の専門を学ぶ中で培われた「学び方」は、必ず役に立ちます。だからこそ、一つの専門を深く追究することで、自分流の「学び方」を身に付けてほしいと思います。
取材=丸山蒼太郎・写真=外﨑功







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