検証 学生を支える施設と制度 ①大学図書館
「使い倒す」くらいに積極利用を
本紙では9月号から連載で、学生を支える本学の施設や制度について検証していく。第1回のテーマは「大学図書館」。総合大学である本学の蔵書数は本部・学部分館で合計約500万冊に上る。国内の大学図書館では上位に入る規模で、専門資料の収集・保存に余念がない。しかし、その機能を十分に活用できている学生は少ないのではないか。そこで、全16図書館分館を対象にアンケートや取材を行い、役割や課題、学生へのメッセージをまとめた。 (丸山蒼太郎)
本学最大の蔵書を誇る文理学部分館
教育・研究支える中核
大学の図書館は、学部や大学院の教育・研究活動を支える中核的な機関。特に教育面においては教材や自習・グループ学習スペースの提供に加え、情報リテラシー教育の場としての機能も重視されている。インターネットの普及で情報収集が容易になる中、「確実な知識や情報」とは何かを選択し活用する力が必要だ。
各図書館分館では専門書を中心として、利用者に情報資源を広く提供できる設備が整えられている。歯学部の堀米拓哉図書館事務課員は「『図書館は成長する有機体である』という言葉もあるように、常に前進し続ける研究者に頼られる存在でありたい」と学生に寄り添う姿勢を強調した。
情報リテラシー向上も
学生の利用状況としては、熱心に利用する学生と、ほとんど足を運ばない学生との二極化が見られるのが現状だ。利用促進、学習のサポートをするため、各分館ではさまざまな取り組みをしている。
主な取り組みとしては、新入生を対象とした「図書館ツアー」や、電子資料の利用方法を周知するガイダンスなどの情報リテラシーの向上支援を実施している。そのほか、学生が選書した本を館内入口に並べることで気軽に入館しやすい雰囲気を作るなど、工夫も行っている。
また、理工系学部では、多岐にわたる学生の研究活動の課題に合った資料の把握、医歯薬系学部では国家試験の学習に十分対応できる環境整備に努めている。理工学部の嶋津誉駿河台図書館事務課長は「研究分野におけるレポート作成の場合、図書利用で特に注意が必要なのは著作権。理工学部分館のカウンターでは著作権に関する相談も受け付けている」とサポート体制について語った。
快適と保存の両立課題
学生からの要望としては「24時間開館」や「館内での飲食」が複数学部で届いているという。しかし、24時間開館については治安や警備面、学生の生活リズムの観点から難しい。また、飲食については検討している学部はあるものの、資料の汚損や害虫防止、他の利用者の快適性の確保から厳しいようだ。分館によっては、飲食スペースの確保が困難である場合もある。
一方、運営上の課題としては電子資料の値上がりが激しいことや、学習スペースの不足があげられる。居心地の良さと資料の保存・収集というニーズの両立が大きな課題だ。
選書ツアーなどを実施
関心の高いイベントとしては「学生選書ツアー」がある。本への興味・関心を深め、学習に役立てることが目的で、同ツアーで選ばれた本は各分館に配架される。理工学部が最初に導入。今では各学部で行われているほか、法学部、三軒茶屋キャンパス、歯学部による共同開催も実施している。
芸術学部では第一線で活躍するゲストを招き、トークイベントを行う「ライブラリーカフェ」や、資料を手に取りながら専門教員の解説が聞ける「ギャラリートーク」などを開催。家でも教室でもない、「サードプレイス」としての機能も拡充が進んでいる。
情報収集力の向上期待
各分館からの学生への要望は、一貫して積極的な利用だ。貴重な資料の閲覧、豊富な電子資料やデータベースの積極的な活用による、情報取集力の向上が期待されている。文理学部の小杉尚也図書館事務課長は「ピンポイントで資料検索するのではなく、実際に専門の書架を前にすることで、新たな発見をしてほしい」と図書館へ足を運ぶ利点を語る。
本学のスケールメリットを生かし、他学部も含めた全学の図書館を「使い倒してほしい」。そのことが全学部分館からの一番のメッセージだ。







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