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特集・企画

卓上の書籍~夏越の祓~

夏越(なごし)の祓(はらえ)。6月30日に半年間でたまった身の穢(けが)れを落とし、残りの月日の無病息災を祈願する神事のこと。学生も日々の疲れが溜まり、前に進まないこともあるだろう。そんな時に心の支えになるような本を紹介する。

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今月のテーマは「夏越の祓」。梅雨のどんよりとした季節に立ち向かうことができる本を期待し、文理学部図書館分館の藤居慶子主任に話を聞いた。

過去に向き合い、前に進める一冊

 20代の頃友人から宮部みゆきの時代小説は面白いと聞いて、ある作品を読んだところメッセージ性の強い物語に引かれ、すっかり愛読作家となりました。その中でも『おそろし 三島屋変調百物語事始』が「夏越の祓」のテーマにふさわしいと思い選びました。

 旅(はた)籠(ご)を営む両親や兄と暮らしていた働き者の娘、おちか。幸せに暮らしていた日常が一変したのは17歳の頃です。ある日、凄惨(せいさん)な事件の被害者、またある意味では加害者となってしまい罪の意識でふさぎ込んでしまいます。心配した両親は、江戸で袋物屋を営む叔父夫婦に娘を預けました。おちかはそこで、江戸の人々から不思議な体験談を聞き、それを叔父に伝えるという仕事を与えられます。さまざまな人の心を知り奥底に封じ込めた気持ちと向き合う、おちかの「祓」が始まったのです。

 ある日おちかは、一人の来客からこんな言葉を言われます。「ひとつ悪いことがあっても、それがどんな悪いことでも、だからってみんな駄目になるわけじゃございません」。全てが順風満帆な人生を送る人はいません。私も仕事でつまずいて落ち込むこともあります。しかしそれは人生の中では、ほんのいっときのこと。振り返ってみれば家族や友人の支えがあって私は今ここに立っていられます。

 学生の皆さんも、おちかや私のように嫌なこと、うまくいかないことをたくさん経験するでしょう。そんな時、この物語を通して自らの厄を祓ってみてはいかがでしょうか。また、宮部みゆきの小説の読み始めとしては『本所深川ふしぎ草紙』がお薦めです。本学では文理学部にしか蔵書がないため、ぜひ図書館相互利用制度を使い、こちらも読んでみてくださいね。

あらすじ

17歳のおちかは、ある事件を境に、ぴたりと他人に心を閉ざした。ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。

ある日、叔父の伊兵衛はおちかに、ある客の応対を任せると、出かけてしまう。おちかは、その客の話に引き込まれていった。いつしか次々に訪れる客のふしぎ話が、おちかの心を解かし始めていく。

ふじい けいこ 文理学部図書館事務課主任。最近の趣味は食べ歩き。

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