就任1年 理事長・学長に聞く
昨年7月1日の林真理子理事長・酒井健夫学長就任から、7月で1年を迎えた。「N・N 新しい日本大学」「日本大学ルネサンス計画」を掲げて改革に取り組んできた両トップに、これまでの成果と「新生日大」への方針と施策について聞いた。
理事長 林 真理子 本学生としての誇りもって
価値ある母校へ
―「学生ファースト」はこの1年でどれくらい実現できたでしょうか。
学生に〝異星人〟に会ってほしい、刺激を受けてほしいという気持ちから、昨年10月より「理事長・学長セレクト講座」を計7回(7月20日現在)開催してきました。
また、オーストラリア・ニューカッスルキャンパスの整備や、「トイレ革命」を順次進めていきます。全学部にあるトイレの洋式便器化を実施します。
私にとって「学生ファースト」とは、母校が価値あるものになること、学生の皆さんに本学生としての誇りを持ってもらうことです。そのためにまだまだ実施すべきことがたくさんあります。
カザルスホール
―理事長の発案であるカザルスホール復活の進捗は。
2026年6月に新装オープン予定です。
これまでカザルスホール活用検討委員会(22年11月設置)において、学生に使ってもらう教育施設ということを大前提に、持続的に維持していけるような運営方法について議論してきました。
私が思っている以上に皆さんの関心が高いので、世間に周知していくべきだと感じ、ことし10月21日にはキックオフコンサートを実施する予定です。
板橋病院建替え
―医学部付属板橋病院の建て替え工事が進んでいないようですが…。
旧体制下での決定をすべて白紙に戻して、基本構想からゼロベースで進めているところです。現在は物価や人件費高騰による工事費の値上がりを危惧していて、もう少しよい手立てがないかを検討しています。
近いうちに改めてご報告ができればと考えています。
旧体制の影響大
―学外から厳しい評価となったブランドイメージ調査をどう受け止めていますか。
今回の回答期間は私が就任して5カ月後から始まったもので、旧体制によるイメージの影響が大きいと感じています。
本学関係者と一般層との本学への「好感度」の結果における隔たりについては認識していますが、現在他大学出身者の採用も増やしていますので、いい刺激となって隔たりは小さくなっていくと期待しています。
多様性の配慮を
―ことし4月末には「日本大学ダイバーシティ推進宣言」が公表されました。今後のダイバーシティ推進施策については。
まず、教職員管理職の女性割合を約15%以上に引き上げたいと思っています。また、本学は障がい者に対する施設が充実していなかったので、今回のトイレ整備に合わせてバリアフリーのトイレ設置も検討しています。
それから、LGBTQ+(性的マイノリティ)の方についても、時間をかけて取り組みたいと思います。
特別調査委員会
―「不正事案洗い出しのための特別調査委員会」の最終報告、各種民事訴訟についての進捗は。
最終報告についてはことし10月ごろを予定しています。各種訴訟については詳細を明かすことはできませんが、私学助成金不交付に関する訴訟についても「けじめ」をつけるために実施していければと考えていますし、本学の膿を出し切りたいと考えています。
イベント参加を
―本紙実施の調査で「理事長・学長セレクト講座」に参加したことがない学生が7割を占めるなど、学生向け施策の反応には受け止め方に役員陣とかい離が見られます。
私は1年間「学生ファースト」を考えて、満足いく学生生活を送ってもらえるように尽力してきました。これからもいろいろなことを仕掛けていくので、学生の皆さんには好奇心やワクワクする気持ちをもって、一緒にイベントに参加してもらいたいです。
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はやし まりこ 1976年本学芸術学部文芸学科卒。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で第94回直木賞受賞。他受賞作多数。2022年7月から理事長就任。
学長 酒井 健夫 部科校連携で規模感生かす
創造性と総合知
―この1年間を振り返っていかがですか。
自信をもって、学長としての責務を100%果たしてきたと言えます。常に本学役員規程の遵守、公正かつ責任を持った職務の遂行、健全な運営・教育研究に心を置いてきました。
現在の最優先課題は教職員が一体となり一連の不祥事による「負の遺産」を一掃すること。一方でこれからも最も大事にしていきたいことは創造性に富み総合知を持った学生・生徒の育成です。多様な学生のニーズに合致した学生支援と社会から信頼される人材育成に取り組んでいきます。
データの一元化
―(教学面のデジタルシステムを構築する)教学DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進捗状況は。
個々の学生の学びに関するデータを「見える化」する学修管理システム(LMS)は、今年度中の完成に向けて準備を進めているところです。
現時点では、各部科校が所有するシステムは統一されていません。それぞれの教学データを一元的に集約、分析して「オーダーメイド型サポート」を実現します。本部所有データの自動連携とともに各部科校所有データを収集、分析し、全学共有のポータルサイト構築を進めていきます。
規模感を生かす
―部科校連携の今後の展開は。
部科校連携推進委員会は第一次中間答申で、部科校間をインターネットで横断的にアクセスできる新しい教育活動を提案しました。具体的には、入学前教育やリメディアル(補修)教育、英会話を学習する「イングリッシュラウンジ」の構築、学術論文の執筆を支援する「アカデミックライティングサポート」を検討しています。
現行システムの全学的な展開も必要です。他学部の授業を受講できる相互履修制度や、付属・準付属、特別付属校生が入学前に大学の授業を受講できる高大接続教育などを推進していきます。
―日本大学未来構想推進体制の今後は。
就学人口の減少に備えて大学の適正規模を考えなくてはなりません。また、学部を越えた施設の共同利用なども検討していきます。
また、全学的な視点から教学事項を検討する教学推進センターは、オンラインを利活用した全学共通教育科目の新規開講を検討しています。
トイレ革命実施
―学生の生活環境改善のための取り組みは。
生活環境が良くなければ学生の皆さんが学修に集中できないのではと思い、「トイレ革命」を実施し、全学的のトイレ洋式化を決定しました。
また、安くおいしい食事が楽しめる学生食堂の実現を検討しています。時期は未定ですが全学部でできるだけ早期に進めたいと思います。
科研費私大4位
―研究推進の成果は。
昨年度の科学研究費助成事業での獲得額(独創的・先駆的な研究に対する助成金)は総額約11億円、公的機関の研究費は約3億円でした。科研費は本学から約700件採択されており、これは私大4位の件数です。さらに、独創的で先駆的な分野の研究、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた研究、産官学連携の研究を推進します。
潜在力と好奇心
―学長ブログで心がけていることは。
身近な話題を取り上げて執筆してきました。一つのものの見方を提示して、学生の皆さんに問いかける形で文章をまとめるように意識しています。学長ブログを通じて大学の現状を学生の皆さんに伝えたいです。
―学生にメッセージをお願いします。
学生時代は志を確立して実力を養う時期です。勉学に、文化活動や、スポーツなどで、何か自分が情熱を傾けられるものを見つけてください。そして、自分の潜在力、新しい知的好奇心を掘り起こし、自分自身を見直していきましょう。
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さかい たけお 1966年本学農獣医学部(現、生物資源科学部)獣医学科卒。93年本学同学部教授。2005年生物資源科学部長。08年から11年まで第12代総長。22年7月から学長。専攻は獣医疾病予防学。医学博士。学外では農林水産省獣医事審議会会長などを歴任。
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