卒業生へのメッセージ~脚本家~ 中園ミホさん
遠回りは人生において大切
大ヒットドラマ『ドクターⅩ~外科医・大門未知子~』や『ハケンの品格』の脚本を手掛けた中園ミホさん(63歳、1982年芸術卒)。「私、失敗しないので」―あの決めぜりふに象徴されるように権力に屈せず、自分の意見をハッキリと言う主人公の痛快さに共感する人も多いだろう。4月から新社会人になる人たちへ中園さんからの応援メッセージをお届けする。
私の好きな言葉は今東光さん(作家・宗教家)の「人生はな、冥土に行くまでの暇つぶしや。だから、上等の暇つぶしをせにゃあかんのだ」。
本当にこの言葉の通りだなと感じます、すてきな暇つぶしを見つけられたら人生って深みも増すし、豊かになれる。それは決して出世するとかお金持ちになるとかではないけれど、寝食を忘れて没頭でき夢中になれるものが見つかれば、人生って本当に面白くなるとこの年になって心からそう思います。
一つを極める大切さ
私は本当にコンプレックスの塊のような人でした。卒業後、会社勤めをしましたが、OLは向いていなくて辞めてしまったのです。1カ月くらい引きこもりましたが、そんな時もそばには大好きなドラマや映画があったから乗り越えられました。
一つのことを極めると強くなれる。人生の中で、つらい壁は何度も来ます。その時に力の湧くものを何か持っていてほしい。それが仕事にならなかったとしても絶対に人生は面白くなるし、強くなれると思います。
昨年放送した『ザ・トラベルナース』は、ニューヨークで新型コロナにかかったスーパードクターの取材の中で生まれました。ニューヨークではたくさんのトラベルナースが活躍していて、そのスーパードクターもスキルの高い看護師さんに命を救われたと当時を振り返ってくれました。取材中に「連ドラで書きたい」とプロデューサーに伝えました。
自分で考えて生きる
私は新型コロナのようなパンデミックや災害が起きたときに、高度なスキルを持った人がかばん一つでパッと駆け付けて活躍するような人が好きです。また、私の脚本には女性の主人公が多く登場します。そのような企画も多く持ち込まれますが、そもそも女性の方が書きやすい。
理想の女性像はなかなか自分にはまねできないけれど権力など強いものによりかからず、自分の足で立って、自分でものを考えて生きていく人がかっこいいなって思います。
価値観変わる経験を
若い人たちにはもっと恋愛をしてほしい。コロナ禍の影響は大きいと思いますが、傷つきたくないから恋愛しないのかなって思います。人は一枚の絵画などに出会い雷に打たれたような自分の価値観ががらりと変わることもあるでしょう。そんな経験をしてほしい。
そして「失う」ことを恐れないでもらいたい。私は、失業とか失恋とか失敗とか、そういう経験をたくさんしてきました。大学時代には最愛の母を病気で亡くしました。失ったときは本当につらいけれど、遠回りして逆に大きな生きる力をもらえたことが私の人生では多かったです。
人生において失う経験が一つもない人って誰もいない。必ず皆さんにもやってきます。それを決して恐れないで「あ、ここからが自分の本当の人生だ」と思って、ジタバタもがいてほしい。目的や目標にストレートに近づけないかもしれないけれど、遠回りは人生にとって大きな成長につながる大切なことです。
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なかぞの みほ 1959年東京都生まれ。82年芸術学部放送学科卒。広告代理店勤務、占い師などを経て88年に脚本家としてデビュー。2013年に『はつ恋』『Doctor-X~外科医・大門未知子~』で向田邦子賞と橋田賞を受賞。その他の執筆作に『やまとなでしこ』『ハケンの品格』『花子とアン』『西郷どん』『七人の秘書』など。
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