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新春インタビュー~林真理子理事長・酒井健夫学長~

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 昨年7月1日の林真理子理事長・酒井健夫学長就任から約半年が経過した。一連の不祥事を踏まえ、日々改革に取り組む両トップにこれまでの進捗と2023年の抱負を聞いた。

理事長 林真理子 民主化努めるも課題は山積

―就任から約半年が経過しました。これまでの取り組みを振り返っていかがですか。

第三者委員会から指摘があった本学の「トップダウン」の風土。それを変えるべく大学経営の民主化に努め、信頼の獲得を目指してきました。
ただ、民主主義は手間がかかる。本学の場合、規模が大きく特に時間がかかります。皆さんもイライラするくらい「(改革が)遅いな」と感じるかもしれません。スピード感は心得ていますが、日常を民主化するためにはある程度仕方がないと思っています。

 ―ネガティブイメージを払拭するために立ち上げた「不正事案洗い出しのための特別調査委員会」の進捗は。

近く中間報告をする予定です。ただ、公表の内容と範囲は今後詰めていきます。最終報告では、本学に関係する懸案事項の調査内容が報告書としてまとめられる予定ですが、公表時期は未定です。

調査の範囲や件数が多く、難航しているようです。月に一度、理事会で調査費用と進捗を報告してもらっていますが費用負担も大きいので「やらない方がいい」との反対意見もあります。そのたびに私は「膿を出し切らないと、新しい日大はない」と力説し、納得してもらっています。

―調査内容の「報告」に留めるとのことですが、看過できない問題が発覚した場合は。

今のところ決まっていません。今後理事会で決めていきます。

―人事面でも、旧田中体制の閉鎖的イメージからの脱却が不可欠です。

これまでの本学には職員の昇進や異動に関する明確な基準がなく、(トップが)好き放題できてしまう状況だったのです。時期は未定ですが、学校法人日本大学として新たな人事制度の基本方針を打ち立てます。

―さまざまなメディアで「旧田中体制で冷遇された人を戻す人事をした」と話されていました。

はい。旧体制とのつながりがないことを確認し、適材適所を心がけたつもりです。
約40年間の作家生活で培った人を見る目を生かして判断しています。

 ―昨年11月には熊平美香氏が理事(理事長推薦理事)を辞任し顧問に。一方で、和田秀樹常務理事が総務・人事担当からN・N「新しい日大」企画担当へ、村井一吉氏が総務・人事担当常務理事へ登用される重要人事の変更が相次ぎました。

常務理事体制がある程度固まった昨年10月、本部の人から「(常務理事に)日大出身者が一人もいない。細かい相談ができて大学に常勤してくれる人がほしい」と言われました。
そこで、熊平さんが理事を辞任されたタイミングで、理事長推薦理事の枠で本学職員の村井さんに来てもらいました。和田常務理事には斬新な発想を期待しています。

―不祥事以降、進んでいない本学医学部付属板橋病院の建て替えは。

耐震性の問題からも建て替えは急務ですが、着工のめどは立っていません。代替の土地がないので、病院運営をしながら細々と進めていかなければなりません。
今は「板橋病院建設推進委員会」で予算の審議を進めています。学生の皆さんからいただいているお金なので丁寧に精査していきます。

―校友会でも改革が検討されています。どのように捉えていますか。

校友会の改革は重要課題です。改革の議論がより活発になるように、このたび思い切った職員人事を行いました。大きく変わることを期待しています。学生が卒業したら「入りたい」と思えるような、民主的な組織に生まれ変わってほしいです。
そして、自浄作用が働く組織になってもらいたいです。一連の不祥事には校友会組織の存在が関係していました。この罪は重い。本当に反省しているのだったら、旧体制時に校友会役員だった人は去就を考えてほしい。

―2023年、本学をどのようにしていきたいですか。

「学生ファースト」の意識は常に持ち、去年よりもいい大学へ。各学部の特色を生かして、活気ある大学づくりに努めます。
訪問してわかったのですが、学部の活気がうまく伝わらないところは入試でも人気がない。それが学部財政の不安定さにもつながっています。学部の自主性は必要ですが、本部からもさまざまなアドバイスをしていきたいです。

 ―最後に、学生へメッセージをお願いします。

みなさんが「日大生だ」と胸を張って卒業できるように、私も頑張ります。
本学生は本当にガッツがあるしバラエティーに富んでいます。日大を一緒に変えていきましょう。

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はやし まりこ 1976年本学芸術学部文芸学科卒。82年『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を出版。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で第94回直木賞受賞。2020年菊池寛賞受賞。22年7月から理事長就任。

学長 酒井健夫 柔軟な改革で満足度を向上

―就任から約半年が経過しました。これまでの取り組みを振り返っていかがですか。

課題が多く非常に忙しかったですが、充実した半年でした。
私は約10年間学外にいたため、知り得なかった内部の情報をこの半年で把握しました。
さらに学外にいたからこそ、新しい視点で「日大はこうあるべき」ということを考えられました。新年を迎え、一層スピード感をもって懸案事項に取り組んでいきたいと思っています。

―改革にスピード感を持たせることを重要視しているのはなぜでしょうか。

新型コロナウイルスのまん延や国際情勢の悪化、少子高齢化、環境汚染などによって、昨今の社会状況はとても複雑化し、なかなか先の見通せない状況下にあります。こうした中で使命を果たしていくには、マスタープランを適切に実行することが必要です。

スピード感ある改革の実行は早期の評価・分析につながり、軌道修正も迅速に対応することができます。時代に合わせた柔軟性のある計画を実行していく姿勢が大切です。

―委員会の設置に取り組まれていますが、その進捗や新たな動きは。

これまで進めてきた教学DX(デジタル・トランスフォーメーション)、部科校連携の推進委員会に加え、このほど「ダイバーシティ推進委員会」を新たに立ち上げました。女性教職員やハンディキャップをもった学生・教職員、留学生などの多様なバックグラウンドを持つ皆さんが勉強しやすく、働きやすい環境を構築することが目的です。ダイバーシティを推進し「個」を大切にすることは、勉強したい意志をもつ学生を迎え入れる私たちの使命です。

私は他大学よりも素晴らしい教育環境を提供していきたい。それと同時に社会に役立つ、存在価値を持つ大学を目指していきます。

―本学の内部質保証の実質化については。

内部質保証は大学教育の使命・目的を実現するため、教学や管理運営を自ら点検して評価し、それをもとに改善し向上していく流れのことです。(内部質保証の)PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を適切にに進めていくことが重要だと考えています。

あくまでも内部質保証は大学をよくするための手段。より良い教育環境、研究環境を整備するという大学の目的に合わせ、私たちは常に目標をおいて進んでいきます。

 ―研究面の充実についての施策は。

本学の先生は皆さん研究に貪欲に取り組み、国などが公募する研究費などに積極的に応募されています。2021年度の科学研究費交付は、日本大学全体として690件、約10億3千万円にも上ります。

このように個々の研究では大きな成果を挙げていますが、その研究を「全」として大きなプロジェクトにすることが必要だと考えています。例えば、現在文部科学省が公募している「国際卓越研究大学」制度などに挑戦していきたいです。

―先の見えない社会展望の中、本学を発展させていく上での課題は。

まず、受験生に選ばれる大学を目指していきたい。そのために本学の存在価値を高めて、より良い大学を維持していくということが重要だと考えています。

入試対策について、入学者の確保と学力の維持向上は同時並行的な課題だと考えます。四半世紀先、半世紀先の未来を見据えつつ、現在の教育にも力を入れていかなければなりません。

そういった意味では、今在学している学生の皆さんに満足してもらえる教育を行うということ。例えばライセンス教育の充実やジョブ型新規採用に向けたキャリア教育の早期化、学部横断的な教育が指標になるのではないでしょうか。

また、付属校生からも選ばれる大学にならなくてはいけません。こども園から高校まで付属校が設置されていることを生かし、自主創造を体現する一貫教育を取り入れることも必要だと思っています。

―学生にメッセージをお願いします。

私が学生の時代は高度経済成長期でした。国民にも学生にも漠然とした楽観主義がありましたが、現在は経済が低成長期に入ってしまい、先行きが見通せません。

しかし、本学で学び得た「自主創造」と「総合知」をもって問題解決に当たれば、必ず未来が開けてくるはずです。これからの難局の時代、本学での学びが必ずみなさんの自信につながると確信しています。

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さかい たけお 1966年本学農獣医学部(現、生物資源科学部)獣医学科卒。93年本学同学部教授。2005年生物資源科学部長。08年から11年まで第12代総長。専門は獣医疾病予防学。学外では農林水産省獣医事審議会会長などを務め、22年7月から学長就任。

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