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酒井健夫学長に聞く  「総合知」を追及し  「自主創造」の体現を

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「教学優先」の日本大学に―。本学で初めて、立候補制による学長選出が行われ、第12代総長の酒井健夫(79歳、1966年農獣医(現生物資源科)学部卒)氏が7月1日に「教学の長」である第15代学長に就任した。任期は理事長同様4年となる。約10年ぶりの執行部復帰となり、今後どのような教育を展開するのか期待がかかる。教学改革への意気込みと指針を聞いた。

酒井健夫新学長

――一度総長を退任されてからの学長就任です。今回立候補された理由は。

2013年に定年退職してから約10年間本学から離れていたのですが、昨年、一連の不祥事が報道されたとき、「どうしてなんだ」と驚きと憤りを感じました。また、マスコミでは本学の何もかもが悪いように報道されているように思いました。危機的状況でも頑張っている学生や教職員はいるにもかかわらず、「日本大学」そのものが世間から誤解されかねないと思い、立候補しました。

年齢を気にする人がいると思いますが、約10年間本学を離れたからこそ、客観的視点と外部機関で培った知見を持ち合わせていますので「務まる」と判断しました。

――「教学優先」を掲げていますが、どのような教育を展開していきますか。

現代社会では、専門分野の学問を究めるだけではなく、幅広い領域の知見を有する「総合知」が求められています。これは、自分自身の力で未来を切りひらく「自主創造」の理念とも共通するものです。学生にはさまざまな学問分野への知的好奇心を持ってもらい、「学部横断的な学修」を展開していきたいです。

昨年の一連の不祥事は「教学優先」の考えが執行部から抜け落ちていたために起こってしまったと考えています。大学の根幹は「教育・研究」。約130年培ってきた伝統を守りつつ、新たな改革を進めて、学生が「総合知」を獲得し得る「学生ファースト」の大学にしていきます。

――「学部横断的な学修」にはどのような改革が必要なのでしょうか。

教育DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進が必要です。

本学は学部ごとにキャンパスを設ける「分散型キャンパス」なので、学生が授業のたびに学部間を移動することは難しいでしょう。そうなると、遠隔授業を展開していかなければなりません。早くて、短期大学部の学生は2年間しか大学にいないわけですから、早急に「学長直轄のDX推進委員会」などを設け、ICT(情報通信技術)の導入を進めていかなければなりません。興味、知識がある教職員の皆さんにはぜひ協力してほしいです。

また、「自主創造の基礎」や「日本を考える」以外の全学共通科目も増設したいです。本学にはさまざまな卒業生がいます。先輩をロールモデルとし、在学生が感化されるような興味深い授業を全学的に展開していきたいです。

――スケールメリットを生かす一方で、学部ごとの専門教育も深める必要があります。

ICTを利用した「オーダーメイド型」の学生サポートを全学的に展開します。学生個人の成績をデータで可視化し、特性を見いだして伸ばす。大学入学時点では、自分がどのような特性を持つのかあまり分からない学生もいるでしょう。本学は16学部もあり、日々たくさんの授業が行われています。「授業の分だけチャンスがある」。そう思って学生個人の強みを見つける支援ができたらと思います。

――本学の課題は。

内部質保証が十分に機能していないことでしょう。ことし6月には、公益財団法人「大学基準協会」より、本学の大学・短大評価が「不適合」との判定を受けました。これは迅速に対応し、改善しなければなりません。

そのためには全学的にDX技術を導入し、本学の運営に関する問題、課題なども可視化し、改善する必要があります。

また、ことし6月に集計された「日本大学学修満足度向上調査」の結果から、学生が興味を引くような授業を展開できていない実態が見えます。図書館などの施設・設備の充実はもちろん、学生にとって必要な教育をしていかなければなりません。

同調査では、ことし1年生の「入学時の気持ち」について、「(本学に)ぜひ入りたいと思った」との回答が半数にも満たないこともわかりました。まずは在学生への満足度を高めないと、この課題の解決はされないと考えています。

――学生にメッセージを。

学生時代は自分が描く希望・夢の実現に向かって志を立て、実力を養うための時期です。そのためには「知的好奇心」を持ち、社会の動向を見つめる必要があります。大学でしか得られない「友人と先生方との出会い」が知的な刺激になり、自身を見つめ直す契機につながり、視野が広がります。そのことこそが「自主創造」を体現する要素となります。

学生の皆さんが充実した大学生活を送ることを強く希望します。

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さかい たけお 1993年生物資源科学部教授。2005年同学部長。08年から11年まで第12代総長。専攻は獣医疾病予防学。医学博士。学外では、農林水産省獣医事審議会会長、内閣府食品安全委員会プリオン専門調査会座長などを歴任。

「副学長2氏に聞く」と「理事長推薦理事が語る」は本紙をお読みください

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