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特集・企画

時間(トキ)の人 天摩由貴さん

 「ジャパンパラリンピック2009」の陸上競技短距離2種目で優勝した。200メートルでは日本新記録を樹立。高校時代から注目されながらも、主要大会では結果を出せなかった。“大器”がようやく花開いた。(8面に関連記事)

 子どものころには文字を識別できた視力が、次第に失われていった。今ではかすかな光と比較的大きな動きを察知できる程度だ。

 高校1年の秋、勧められるままに全国障害者スポーツ大会に出場した。結果は60メートル音競争で2位。素人同然の選手の成績としては上々のはずだが、悔しかった。生来の負けず嫌いがむくむくともたげ、陸上部の先生について本格的に練習に取り組んだ。ところが、熱心に練習しても思うようにタイムは伸びない。満足いく結果を出せずもんもんとする毎日。あっという間に高校生活を終えていた。

 指定校推薦で本学に入学すると文理学部の陸上部に入部。高校時代の陸上部顧問の友人だった歯学部の佐藤紀子専任講師(健康科学)に紹介され、伴走者の近藤克之さん(27歳、2007年大学院文学研究科博士前期課程修了)と出会った。それ以来、練習メニューの作成やフォームのアドバイスなどは近藤さんが引き受けている。

 競技者と伴走者は「伴走ひも」と呼ばれる輪状のロープを持って走る。慣れると、ひもの張り具合で距離感がつかめるようになる。今大会で出場したT11というクラスはサングラスなどで完全に視界を覆った状態で走るが、選手に恐怖心はまったくないという。きずなで結ばれた伴走者への信頼と経験の蓄積がなければ到達できない境地だ。

 今シーズンの目標は100メートルで13秒台、200メートルで28秒台を出すことだった。今大会の200メートルでの記録は29秒20。満足はしていない。夢は日本代表として国際パラリンピックに出場し世界でも通用する選手になることだ。(海)

時間の人 天摩由貴さん.jpg
天摩 由貴さん
女子200メートル(T11)で日本新
 1990年7月26日、青森県生まれ。
文理学部数学科1年。19歳。
趣味は買い物。

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