医・丸岡准教授ら研究チーム 世界初のヒト化マウス使い難治性喘息モデル開発
医学部は9月24日、同学部の丸岡秀一郎准教授(呼吸器内科)らと実中研ヒト疾患モデル研究室の伊藤亮治室長らの研究チームが、従来のステロイド治療が効かない「難治性喘息(ぜんそく)」の病態を再現する新しいヒト化マウスモデルを世界で初めて確立したと発表した。
本学の研究陣は、丸岡准教授のほか山田志保助手、權(ごん)寧博主任教授の同学部呼吸器内科スタッフ。
ぜんそくは全世界で約3億人が罹患(りかん)している。うち約10%を占める難治性ぜんそく患者は慢性的な好酸球性気道炎症が持続するため、病態メカニズムの解明や治療法の開発は急務だった。
同研究チームではこれまで、3種類のヒト由来サイトカイン(細胞を刺激し影響を与える作用を持つ)を発現させた免疫不全マウスを開発。このマウスにヒト造血幹細胞を移植すると、ヒト好酸球を含むヒト免疫細胞が再構築された。そして、アレルギー炎症に関与するⅠL―33というサイトカインを投与することにより、ヒトのぜんそく病態を再現できる世界初のヒト化マウスモデルを確立した。
今回の研究では、免疫不全マウスにヒト造血幹細胞を移植したヒト化マウスに、IL―33とTSLPという2種類のサイトカインを投与。このサイトカインは、上皮細胞から分泌される。これらが肺の中の免疫細胞に刺激を加えると、気道が狭くなるなどのぜんそく反応が見られる。
このサイトカインを投与したマウスにステロイドを投与すると、通常は減少するはずのヒト好酸球が減少しなかった。また、杯細胞と呼ばれる粘液を分泌する細胞の過形成も抑制されなかった。このモデルマウスにより従来は難しかったステロイド抵抗性の難治性ぜんそくの病態を再現することに成功した(=図)。
さらに、このモデルマウスを用いて既存の治療薬であるベンラリズマブの効果を検証。その結果、ステロイドでは抑えられなかったヒト好酸球による炎症と杯細胞の過形成の抑制が確認できた。
今回の研究で確立した難治性ぜんそく病態モデルのヒト化マウスは、ヒトの免疫細胞を介してステロイド抵抗性の病態を再現できる世界初の重要なモデルマウスだ。このモデルを用いることで、難治性ぜんそくに関する免疫学的メカニズムをより精緻に解明できるだけでなく、新しい治療薬の有効性や安全性を検証する前臨床モデルとしての応用も期待される。







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