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卒業生インタビュー 脚本家・吉田恵里香さん

 今年4月から9月にかけてNHKで放送された連続テレビ小説「虎に翼」。日本初の女性弁護士、戦後は裁判官として活躍した三淵嘉子さんをモデルに描かれ、大きな話題を呼んだ。脚本を手掛けたのは本学芸術学部出身で脚本家の吉田恵里香さん(2010年文芸卒)だ。作品に込めた思いや脚本家を志した理由などについて特別インタビューを行った。 (取材=中道誉悠)

平等や自由をテーマに

今回、朝ドラのオファーを受けた際に、何かを成し遂げた人ではなく、サポートする人の物語を「良き母」や「献身的な妻」とは違うベクトルで描きたいと思っていました。それを突き詰めていくと平等や自由というテーマにつながり、日本初の女性弁護士の三淵さんはそのテーマと親和性が高いと感じ、ヒロインのモデルに選びました。
ただ、もちろんドラマなのですべてを史実通りに描いたわけではありません。史実では再婚をした際に名字を三淵姓に変えましたが、ドラマ内では改姓を拒否し、遺言書を交し合って「夫婦のようなもの」になる事実婚を選択しました。それは三淵嘉子ではなく、主人公の猪爪寅子だったらきっと違う選択をしたのではないかと考えたからです。これまでの朝ドラは登場人物の国籍自体を変えてしまったり、お妾さんがいたのにその存在を消してしまったりということもありましたが、あまり騒がれてきませんでした。でも夫婦別姓の問題だけ史実とは異なる点が指摘されることは、そこに対する差別や偏見があることを感じ、逆に私はやった意味があったなと感じました。
また、三淵さんを調べていくうちに今日の夫婦別姓や同性婚に関する話題は最近になっていきなり取り沙汰されたわけではなく、以前からの地続きで改善しようと動いてきた人たちがいることを改めて感じました。だからこそ、それらの話題が最初に議論された際に解決してくれていたら、今の私たちの悩みが少なくなっていたのではと思います。ですが、すぐに解決できないからこそ、私たちもずっと考え続けなければいけない気持ちにさせられました。

今つくる意味を考えて

今の時代は動画配信のサブスクリプションが浸透し、過去の作品も見ることができたり、ネット配信のみの作品もあったりと人々が触れるコンテンツの量が多いです。そのため、この作品を今つくる意味などはすごく考えますし、今やって良かったと思ってもらえる作品をつくりたいです。
さらに、昨今のドラマは性的マイノリティの方など社会的に声を上げにくい人たちが省かれて描かれがちだと感じています。私はそうではなくてそのような人たちをいないものとして扱わず、当たり前に描くことを心掛けています。

知り合いからの紹介で

幼少期から文章を使う仕事を志していましたが、強く脚本家になりたいとは考えていませんでした。しかし、学生時代に知り合いから今の事務所を紹介されたことをきっかけに事務所で手伝いをするようになりました。そのうちにコンペなどに出させてもらうようになり、徐々に仕事が増えていきました。
学生生活については大学2年生のころから事務所の手伝いをするようになり、仕事と学業を両立することを意識していました。楽しい学生生活でしたが、実習の授業があまりとれなかったので積極的に取っておけばよかったなと後悔はあります。

自分の気持ちで選択を

自分の成功体験だけをベースにいろんなことを言ってくる大人も多いと思います。しかし、そんなことは気にせず自分の軸でやりたいことをやるべきです。やらなかった後悔や誰かにやらされた後悔はずっと心に残ります。自分でやった後悔はそんなに引きずりません。昨今は失敗が許されない、間違えてはいけない風潮がありますが、そんなことはない。周りに流されず自分の気持ちで選択ができる人になってほしいです。

よしだ えりか 1987年神奈川県出身。2010年本学芸術学部文芸学科卒。脚本家。21年に『恋せぬふたり』で第40回向田邦子賞。他代表作に『ヒロイン失格』(15年)『Heaven? ~ご苦楽レストラン~』(19年)など。

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