学生が求める!新たな日本大学 ー(5)ー
安心して相談できる場所の設置を
第5回のテーマは「LGBTQ+」。今年10月には東京高等裁判所が同性婚を認めない法律規程を憲法違反だとするなど、LGBTQ+に対する社会の関心が高まっている。本学は今年4月、全ての学部や付属校にダイバーシティ推進委員会を設置したが、LGBTQ+への対応は進んでいるのか―。本学の現状を調査するため、16学部(危機管理、スポーツ科学部は三軒茶屋キャンパス教学サポート課が統括して回答)・通信教育部や学生にアンケートを実施。LGBTQ+への取り組みが進んでいる早稲田大学の事例も含めて、本学における対応策を探った。 (緒方桃子)
「無関心」の学生多い
学生を対象にしたアンケートには120人が回答。ジェンダーやセクシュアリティに関する大学の対応への認知度については「知らない(無回答含む)」との回答が約98%(118件)を占めた。大学に求める対応を自由回答で尋ねても63件のうち「わからない」「ない」が最多(49件)。LGBTQ+に対する本学学生の関心の低さが浮き彫りになった。その一方で「ジェンダーに関する差別や偏見の排除」「施策の積極的な広報」を求める意見や、「相談の場」「心置きなく表現できる場」を求める切実な声も聞かれた。
本音を話せる環境必要
早稲田大学には「LGBTQ+とそうかもしれない学生のための居場所」がある。大学公認サークルのGLOWだ。他大学の学生も含め約120人が所属。入会検討者らを招き交流会を実施したり、部室を開放して交流の場を設けたりしている。
白幡翔八幹事長(社会科学部社会科学科2)は「日常生活では自分のセクシュアリティを表明しない学生が多く、お互いの存在を把握できない。本音を話せる環境が必要」と「リアルの場」の提供を強調する。オンライン上では性別の詐称も簡単にできる。本学にも年代が近く、同じ境遇の学生が顔を合わせられる公認サークルの設置が欠かせない。
学部により対応に違い
本学は今年4月、全ての学部や付属校などにダイバーシティ推進委員会を設置したが、全学的なLGBTQ+の専門機関の設置には至っていない。各学部などがそれぞれ施策を企画・立案する体制をとっている。
16学部と通信教育部で具体的な対応について本紙が調査したところ、全てで「だれでもトイレ(多目的トイレ)」が設置され、対応が進んでいた。健康診断時の対応は事前に相談があった学生に対して「比較的空いている時間を案内する」(工)、「業者の協力の下で着替えから診断まで、他の学生と一切重ならないように配慮する」(文理)などさまざま。学内での通称名の利用も大半の学部で認めていたが、生産工・松戸歯学部は「認めていない」、歯学部はこれまでに申請がないため「事例なし」との回答だった。キャンパスが点在する本学では学部により対応が異なるのが実情だ。全学的な活動拠点の設置が求められる。
先進事例:早稲田大学
大学の取り組みの先進事例として、早稲田大学には2017年に設置したジェンダー・セクシュアリティセンター(GSセンター)が挙げられる。ジェンダーやセクシュアリティに関心のある全ての人々への相談場所の提供、実態の把握、研修・啓発活動やイベント実施を主導。毎年、学内外に向け活動報告書で実態を公表している。
スタッフも充実した体制。学生に近い立場で相談に乗る「学生スタッフ」、専門知識を持った「専門職員」、学内事情に詳しい「専任職員」がそろっている。学生スタッフや専門職員が現場の声を聞き取り、専任職員が学内機関との連携を担う。
本学も学生スタッフや専門家が学生や教職員の意見を集約する拠点を置き、一学生の相談内容を具体的な施策に高められる体制を整備すべきだ。そして、LGBTQ+に関する各学部対応の実態を集約し、活動報告書で毎年共有できるようにすれば、学部間で開きのない全学的な対応につながるはずだ。
現状の意識変えるには
ただ早稲田大学のような充実した体制を整えるまでには時間がかかる。そこで、まずは多数のキャンパスをまたぐイベントを開催し、当事者が安心して相談し合える仲間を見つける機会を設けてはどうだろうか。全ての学生や教職員らに関心を持ってもらい、「LGBTQ+の学生がいないことを前提にした仕組み」の多い現状に疑問を抱くきっかけづくりにしてほしい。
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