違法薬物事件 11月中に改善計画提出へ
「第三者委答申検討会議」を設置
本学は11月16日に「第三者委員会答申検討会議」(議長=久保利英明弁護士)を設置した。「日本大学アメリカンフットボール部薬物事件対応に係る第三者委員会」(委員長=綿引万里子弁護士)の調査報告書を踏まえ、同会議で法人としての管理運営体制の再構築を含む改善計画の策定などを検討していく。本学は検討内容に関係者の責任所在などを加え11月中に文部科学省へ提出する予定。
同会議の設置は11月16日の臨時理事会で決定。議長に学外からガバナンスやコンプライアンスに詳しい久保利弁護士を迎え、同会議は7人で構成。第三者委の報告書を受けて本学内で審議してきたワーキンググループの役割を同会議へ発展的に置き換え、文科省へ提出するための再発防止策と改善計画の検討などを本格化させた。
第三者委の報告書では本学の対応に多くの「不適切な行為」があったと列記。それらを通観し「立証されていない事実や立証される可能性が低いとみなした事実を矮小化し、得られた情報を都合よく解釈し、自己を正当化するという姿勢が顕著」と指摘した。
また「刑事訴訟において有罪になるか、その立証がなされ得るのか」という判断基準の下で意思決定が行われ、本学の「社会的信用が大きく傷つく結果になることが十分理解されないまま対応が重ねられた」とした。
信用失墜の最大原因
中でもことし7月6日に澤田康広副学長が部員から大麻の可能性が極めて高い植物片などの入った缶を預かり、警察に報告せずに12日間も本学本部で保管し続けた対応は「世の中の常識からは乖離した独自の判断」で「社会から本学の隠蔽体質を疑わせ、本学の信用を著しく失墜させた最大の原因」と記述した。
このことは「証拠の隠蔽や大麻所持罪の疑惑を持たれることになった場合、それは大学トップ層の問題であり、社会からの批判や不信は単なる学生の違法行為(大麻使用)の比ではない」とした。
同月7日には酒井健夫学長に植物片の発見と保管を報告したが、酒井学長はこれを問題視することなく、警察への提出や学内の関係各所への連絡の指示も出さなかった。
続いて同月13日には澤田副学長と競技スポーツ部長から林真理子理事長に報告されたが、林理事長はしっかり調査するように伝えたのみで危機管理上必要な対応をとらなかった。本来、不適切な行為が行われないよう制御すべき理事長や学長によるガバナンスが全く機能せず、報告義務が果たされなかった結果、理事会や監事によるガバナンスも働かなかった。
本学の組織風土については「最高レベルの管理者が危機管理規程を無視して報告しなかったり、時には危機管理規程に基づく報告をしないことを申し合わせたりするなど随所に明白な規程違反行為がある」と指摘。
コンプラ意識乏しい
本学は近年も大きな不祥事を起こしているのに「コンプライアンスの意識が乏しいのは到底理解できない」と厳しく記述。必要な情報が澤田副学長や競技スポーツ部に独占され、報告が滞ったことが早期の危機管理体制構築を妨げたとした。これは「権限と責任についての認識が希薄」とし「上位者の意向にそのまま従う傾向が強く、縦・横の牽制関係が働いていなかった」とした。
「ガバナンスの改善」で本学の対応を見ると「理事長、学長の選任手続きで、客観的に必要とされる能力・経験等の要件を明示し、候補者の評価をし、合理的なプロセスを経ていたかを検証」する必要を記述。「組織の見直し」では執行部会を挙げ、重要事項を実質的に決定しているのに法的根拠も意思決定権限もないことを問題視。さらに指揮命令系統の明確化や理事長・学長スタッフの充実、危機管理広報の重要性認識、危機管理体制整備などを指摘した。
10月末の記者会見では、綿引委員長が本学の対応について「基本的な判断基準が誤りだった」とし、中村直人委員(弁護士)は「組織の体を成していない」と発言した。
記者会見(10月31日)を行う綿引第三者委員会委員長(中央)、中村委員(左)、小林明彦委員
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