卓上の書籍~良夜の月~
9月は中秋の名月、10月には十三夜があり、日本では秋になると月を愛でる季節を迎える。今年は9月29日から約2カ月間にわたり「第2の月」も登場。小惑星が一時的に地球の衛星になるという。煌々と輝く月を眺め、思いを巡らせたことのある人も多いのではないだろうか。
今月のテーマは「良夜の月」。満月に照らされている時のような心が動かされる本を期待し、本学図書館生産工学部分館の岡田宗介図書館事務課長に話を聞いた。
生きた証を残す 自分なりの表現
坂本龍一といえば、「教授」と呼ばれ、東京藝術大学出身で学究肌のイメージがありました。しかし、偶然観たNHKの番組では、病床でも音楽をつくり続け、最後までスタジオで演奏を録音する姿がそこにありました。自分なりの生き様を残そうとしている坂本さんに興味を持ったことが、この本を読んだきっかけです。
当初病床で思いをつづった闘病記かと思っていたのですが、そうではありませんでした。いまわの際まで創作したいという意欲に溢れていて、常に現代アートや環境問題のことなどにもアンテナを張っていたようです。万物から影響を受け関わり合いながら、自身の音楽を紡いできたことが伝わってきました。
書名は、坂本さんが音楽を手がけた映画『シェルタリング・スカイ』の一節からとられています。
「あと何回 満月をながめるか/せいぜい20回/だが人は 無限の機会があると思う」。映画の終盤に原作者が現れ、語った言葉です。これは残りの人生でできることは限られてくるけれど、悲観するのではなく自分に何ができるのかを考えるということだと思います。坂本さん自身も「命が尽きる最後のその瞬間まで新たな音楽が作れたら」とつづっています。私も学生の頃から考えると、1年の感覚がずいぶんと短くなりました。その時までに自分ができることは何だろうか、ということを意識し始めました。
坂本さんは私の親に近い世代で、大学生は私の子どもの世代に当たります。橋渡しという意味でも、紹介したいと思いました。学生はスポンジのように何でも吸収し、これから何にでもなれます。学生の時間をぜひ楽しんでほしいと思います。腐らずに挑戦し続け、実力はそんなものじゃないということに気付いてもらえたら幸いです。
あらすじ
自らに残された時間を悟り、教授は語り始めた。創作や社会運動を支える哲学、国境を越えた多彩な活動、坂本家の歴史と家族に対する想い、がんと共に生きること、そして自分が去ったあとの世界について――。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す自伝。著者の最期の日々をつづった、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿も収録している。
おかだ そうすけ 生産工学部図書館事務課長。趣味はカレーの食べ歩き
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