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学部・大学院

医  森岡教授ら治験実施

先天性CMV患者に福音

医学部の森岡一朗教授(小児科学)が治験調整医師を務める6医療機関の研究グループは、症候性先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染児を対象にバルガンシクロビル塩酸塩ドライシロップの有効性と安全性を明らかにする医師主導治験を実施した。

その結果に基づき、薬剤の製造販売を担う田辺三菱製薬がこのほど、同感染症の治療薬としては世界で初めて適応追加承認を取得した。

先天性CMV感染症は、妊婦から胎児に母子感染する希少疾病。生まれながらに難聴などの症状を有する症候性と、無症状で出生する無症候性がある。日本の年間総出生児の約0・3%が先天性CMV感染児で、そのうち約20%が症候性である。

バルガンシクロビル塩酸塩ドライシロップは2018年に同製薬会社が製造販売承認を取得。臓器移植でのCMV感染症の発症抑制などに使われていたが、症候性先天性CMV感染症においては未承認だった。よって、治療費は全額患者の自己負担だった。その上、特定の病院以外では治療を受けられなかった。

小児科医として患者とその家族に日々向き合う森岡教授は「患者の人生がかかっている。全国で治療を受けられる環境を作るべき」と熱い思いを持って活動してきた。

研究グループは08年から多施設共同開発研究を開始した。18年には確定診断法を確立し、20年から6カ月間の治験を実施。そしてことし3月、研究開始から約15年を経て適応追加承認の取得につながった。

治験では、六つの大学病院で24人の乳児に1日2回経口投与した。その結果、統計学的にウイルス量の減少が認められ、14人の聴力障害の程度が改善された。

今後は、出生時に症状が出ない無症候性の先天性CMV感染症に対する追加承認を目指す。森岡教授は「今回の承認がゴールではない」とさらなる研究に向けて決意を語った。

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