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馬術全日本学生三大大会 団体総合15連覇

馬場個人で砂川初V

 馬術の全日本学生三大大会が10月30日から11月3日にかけて兵庫県の三木ホースランドパークで行われ、本学は団体で馬場馬術と総合馬術の2種目で優勝、障害馬術は3位に入り、団体総合で堂々の15連覇を達成した。個人では砂川成弘(スポーツ科3=奈良・山辺高)が馬場馬術で初優勝した。
 (文・写真=藤井菜穂)

 馬場馬術は3種類の歩き方を基本に、演技の正確さや美しさを競う。団体は砂川らの活躍により合計得点率199・038%となり、2連覇を達成。個人では予選上位10人が出場する決勝に砂川、上村汀(スポーツ科1=鹿児島工高)、奥田記枝(生物資源科4=三重・高田高)の3人が出場。
 昨年同種目で2位だった砂川は、芸術点が75・280%と最も高く、最終得点率72・165%と唯一70%台を収め、栄冠を手にした。上村は5位、奥田は8位と予選時を上回る順位で健闘した。

 総合馬術は馬場馬術、障害馬術、クロスカントリーの3種目を同一人馬で競い、減点合計で順位が決まる。砂川は馬場馬術、クロスカントリーを終えて暫定1位に。しかし、最終競技の障害馬術でバーを落とし早大の細野光(3)に逆転を許す。3種目総減点で0・8及ばず2位に終わった。
 奥田は、障害馬術を総減点0で昨年より順位を二つ上げて6位と奮闘。今大会初出場の波多野有哉(生物資源科1=東京・明星学園高)もクロスカントリー、障害ともに総減点0で7位と好成績を収めた。総合馬術団体として10連覇を果たした。

 一方で障害馬術は団体で川野剛(スポーツ科4=茨城・水戸商高)、奥田、上村が出場するも、総減点を24とし2位の専大と並んだ。しかし団体総タイムで大きく差をつけられ関大、専大に次ぐ3位に終わった。

 団体3種目の合計得点は906点。2位の明大に191点の大差で、見事に15連覇を飾った。
 

絶対王者へ導く

 〇・・・表彰式が終わり、ウイニングランで砂川は笑みを浮かべながら拳をあげた。

 馬場馬術個人を制し、団体総合連覇にも貢献した砂川。昨年、馬場個人で2位に終わった雪辱を果たし、大会後には「勝てて一安心している」と率直な心境を語った。しかし、本心には「負けたままでは終われない」という強い執念があった。

 砂川は昨年、自身の弱みを「メンタル面」と明かしていた。プレッシャーのかかる場面で勝利をつかむため、関東学生三大大会以降「自らにプレッシャーをかける」ことを意識的に継続。技術面でもコーチの指導に頼るだけではなく、仲間の意見も取り入れながら自分のやり方をつくり上げた。その結果、プレッシャーのかかる場面でも積極的に行動できるように変わったという。

 馬場馬術団体戦。まさにメンタルが試される状況を迎えた。引き離され緊迫した場面で臨んだ最終番手。当時の心境を「自分が結果を残さないと絶対に追い抜けなかった」と語る。目標を70%と高く設定。結果は69・926%だったが、「相手にプレッシャーをかけることできたし、自分自身も気持ちを高めて臨むことができた」と、この一戦をメンタル成長の証しと確信した。

 今年の馬場個人優勝によって、砂川選手は「全て解き放たれた」と感じている。しかし、総合馬術では馬場・クロスカントリーでトップに立ちながらも障害馬術でバーを落とし、惜しくも2位に。その悔しささえも「新しい楽しみ方を見つけるきっかけになった」と話す。

 「今年負けたら去年がたまたまになってしまう」という危機感を乗り越えた今大会。来年はいよいよ最終学年。「個人も団体も全種目取って『日大絶対王者』を狙う」と目標を掲げる。本学を栄光へ導くエースの闘争心は、さらに苛烈を増す。

仲間と乗り切る

 〇・・・「自分の出番だけが全てじゃない」―。
 総合馬術個人で、昨年の8位から6位へと順位を上げ、本学を団体15連覇へ導いた奥田。4年間の競技活動には、「責任」と「チーム」が常にあった。

 奥田が2年間を共にした愛馬は21歳の桜艶と桜蝶、19歳の桜恋。長年のキャリアを持つ高齢馬だ。特に桜恋は大会直前の9月末に疝痛(せんつう)を患い、一時は体温が40度を超え、体重は60㌕も落ちる危機的な状況から回復したばかりだった。
 その高齢の愛馬を万全の状態で本番に送り出すため、奥田は「自分の練習」よりも「馬の調整」を最優先。毎日のきめ細やかなケアと、脚の確認を徹底し、3種目の過酷なスケジュールを乗り切った。

 しかし、馬場馬術予選でミスをしてしまい「本当に沈んでいた」と振り返る。ネガティブになりやすい自分を抑えきれず、チームの足を引っ張ってしまうのではないかという重圧に苛まれた。
 そんな時、奥田を救ったのは、仲間とコーチの言動だ。最終番手の砂川が69・926%と高得点を収めた。コーチからは「これがチームなんだよ」という一言。その言葉に目が覚めた。

 「自分の出番だけが全てじゃない」。チームメートが励まし合い、補い合うことこそが勝利の道だと気づかされた瞬間だった。
 4年生として、1年生の緊張を解くために積極的に声をかけ、チームを牽引し続けた奥田。そして、最後に託した願いは「連覇を繋いでほしい」。

 奥田が渡したバトンは、明大の記録17連覇を超えるという「大きな夢」に向かって、受け継がれていく。