学生生活に潜む犯罪に要注意! ーオンラインカジノー
昨今、大学生が軽い気持ちで犯罪に手を染めてしまうケースが増えている。今年に入って注目されたオンラインカジノ。芸能人やスポーツ選手の利用が報道された。大麻が絡む違法薬物事件は逮捕される20代以下の割合が7割を占め、大学スポーツ界での事件も後を絶たない。さらに闇バイトでも多くの学生が逮捕されている。これらの犯罪は一度でも関わると人生を棒に振ってしまう。まずは危険性や違法性を正しく認識することが重要だ。(取材=中道誉悠)
20代利用率は世代最多 半数が違法性認識せず
今年3月、警察庁はオンラインカジノに関する初の実態調査の結果を公表した。
調査によると国内でオンラインカジノを利用したことがある人は推定で約337万人。うち20代は全体の3割を超える約110万人と言われている。20代の利用率(5・80%)は他の年齢層に比べても高く、一度でも利用したことのある割合も最も高かった。
また、オンラインカジノを違法と認識していない人の割合が高いことも浮き彫りとなった。違法性を認識している割合は全体で56・5%。20代はそれを下回る51・1%と半数だった。オンライン上の賭博行為はスポーツベッティング、バカラなどの名称にかかわらず犯罪だ。賭博をした者は50万円以下の罰金又は科料、常習として賭博をした者は3年以下の拘禁刑が科せられる。
賭けの総額は年1兆2400億円にのぼる。20代の1カ月の平均賭け額は5万1676円で30代に次いで2番目に高かった。オンラインカジノで借金をした経験がある割合は20代で53・3%と過半数を超えた。
また、身の回りにオンラインカジノを利用している人を知っているかの質問に対しては、どの年代も9割超が「いいえ」と回答。だが、未経験者の20代の1割が今後、賭博への強い関心があることが分かった。その理由については「勝ちやすそうだから」が最も高く、次にスマートフォンでいつでもできるといった「手軽に楽しめそう」が続いた。
過去にはテレビCMも
オンラインカジノの認知度は全体で15・5%という。うち20代は22・7%と高く、知ったきっかけは「YouTube」や「TikTok」といった動画プラットフォームが他の世代に比べ高い割合を示した。ただ、全世代で最も高かったきっかけはテレビで、全体の64・5%を占めた。今年2月の社長定例会見でテレビ朝日は2022年9月から23年4月に、BSテレビ東京は20年から23年に国内の利用割合が高いオンラインカジノ大手の無料版CMを放送していたと公表した。
SNSの広告が違法に
現在、大きな社会問題となっているオンラインカジノだが、広告やサイトへのアクセスの規制は十分だろうか。今年6月に改正ギャンブル等依存症対策基本法が成立。SNS上での宣伝やまとめサイトの作成などが違法となった。さらに総務省は4月からサイトへのアクセスを強制的に遮断するブロッキングも視野に入れた規制を検討する有識者会議を設置。決済手段の抑止、違法行為に対する意識啓発や取り締まり対策を講じていくべきと提言している。
しかし、現在でもインターネットでオンラインカジノについて検索すると、国内から簡単に専門サイトへ入ることができるという。あるオンラインカジノサイトは日本語で「厳格な審査を通過」「公平公正なゲーム」をうたい、一見違法性があるとは認識できない仕様になっている。こういった犯罪行為に手を染めやすい状況も問題だ。
田中紀子代表に聞く
手軽さから依存症に
ギャンブルで人生無駄にしないで
オンラインカジノの問題点や背景について詳しい「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表に話を聞いた。
コロナ禍背景に広まる
日本でオンラインカジノが広まった背景は、新型コロナウイルスの流行が大きく関係しています。当時、コロナ禍で多くの娯楽が失われた際、オンラインカジノ業者側が日本を狙い撃ちにし、広告宣伝活動を強化。その結果、日本からのアクセスが100倍にまで増加しました。当時はオンラインカジノの違法性が周知されておらず、テレビCMやスポーツ紙などでも広告活動が展開されていました。その後、国会議員や官僚への私たちからの働きかけや、2024年の大谷翔平選手の元通訳の事件などで大きく注目され、警察も取り締まりを強化するようになりました。
24時間ギャンブル可能
オンラインカジノは他の公営ギャンブルと違い、スマートフォン1台で24時間できるという大きな特徴があります。若い人にとってスマホは必需品。そんな一番身近なツールでいつでもばくちができてしまうのは大きな問題です。公営ギャンブルも一日中やっていて危険ではありますが、オンラインカジノはその上をいっている印象です。
また、オンラインカジノやギャンブルに関わらず、薬物やアルコールなどは若いうちに手を出すと依存症になりやすいです。特にギャンブル依存症になる人の開始年齢は平均18・1歳。事業者側も若い人を依存症にさせて自分たちの顧客にしようと若年層向けにターゲット広告を出していて、手を伸ばしやすい状況にあります。
10%が大学生の相談者
私たちの下に相談に来る学生も増えています。今までは相談に来る人のうち、大学生は5%程度でしたが、今年に入り、10%くらいは大学生が占めるようになりました。
相談に来た人の例では大学生のうちにオンラインカジノにはまり、借金苦から最終的に詐欺の受け子や出し子をやって実刑判決を受け、学校を中退した人もいます。このような事例は多く、オンラインカジノに手を出し、依存症になっても若い人はまともな金融機関からそんなにお金を借りることはできません。お金をすぐに調達できず犯罪に結びつきやすいのも大学生の特徴です。
動画配信サービス登場
学生や若い人が典型的に陥りやすいきっかけとして友人、知人に誘われるケースが多いです。ただ、それだけでなくネット広告から専用サイトにアクセスしてしまうケースもあります。ネット広告に関してはコロナ禍の時期はYouTubeなどの広告も目につきましたが、なくなりました。しかし、現在はオンラインカジノ業者が運営する新たな動画配信サービスなども登場し、そこから手を出す人も見受けられます。
自分以外の人も不幸に
昔と今のギャンブルとでは危険度は全く違います。大切な人生をギャンブルでは無駄にしてほしくない。自分以外の多くの人を不幸にするようなものに安易に手を出してはいけません。







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