検証 学生を支える施設と制度 ③奨学金
事前に情報集め、悩まず相談を
大学図書館、学生食堂と続いた連載企画。最終回となる第3回のテーマは「奨学金」。家賃や物価の上昇で家計の負担が増す中、本学でも奨学金を前提に進学・修学を考える学生は少なくない。一方で、奨学金返済のため卒業後から「多額の借金」を抱え不安を抱く声も多い。奨学金をどう借り、どう返せばよいのかを取材した。(大須賀光輝)
学部に掲示される奨学金に関する多くのポスター
学び支える奨学金制度
奨学金は、経済的理由で学ぶ機会が閉ざされることを防ぐ制度だ。入学金や授業料だけではなく、家賃や通学費、教科書代なども対象となり、家庭の負担だけでは賄いきれない費用を補う「経済的セーフティーネット」と位置付けられる。返済義務のない「給付型」と、卒業後に返済が必要な「貸与型」があり、給付型は世帯収入や成績などの条件を満たす学生に支給される。貸与型はより広い層を対象とするのが特徴だ。
本学には60種類を超す奨学金制度があり、給付・貸与総額で全国トップクラスの充実度だ。例えば本部が設ける給付型には全学共通の各種奨学金や特待生制度、外国人留学生向けの奨学金などがある。さらに各学部でも、成績優秀者や家計困難者などを対象にした独自の給付奨学金が複数用意されている。多くは授業料の一部または半額相当を給付する形。ほかに本学独自の貸与型奨学金制度もある。
さらに日本学生支援機構(JASSO)の奨学金も利用できる。本学学部生でJASSOの貸与型奨学金を利用している学生は2023年度時点で1万6623人に上り、学部生全体の4人に1人が借りている計算になる。奨学金は本学でも一部の学生だけの制度ではなく、多くの学生の学びを支えている。
広がる利用と重い負担
全国的に見ても奨学金利用は拡大している。JASSOによると、全大学生のうち何らかの奨学金を利用する大学生は18年度の47・5%から22年度には55%へ増加し、今や大学生の過半数が利用している。
奨学金を利用している本学学生に話を聞いた。「兄弟で大学に進学していて、親の負担だけでは学費が払えない。奨学金がなければ大学へ通えない」と法学部3年の学生は話す。ただ、貸与型の場合「多額のお金を借りるのは正直怖い」「返済できるか不安で申し込めない」という悩みも聞かれる。JASSOの統計では、大学生による在学中の貸与型奨学金は平均借入総額で300万円台前半に及ぶ。返済期間は実に15年前後にもなる。
昨今は物価や家賃の上昇も加わり、「奨学金を借りても生活費が苦しい」と感じる学生は多い。このため「授業のない日はバイトを入れている。テスト前もシフトを減らせず、自習時間を削ってしまう」と経済学部2年の学生は語る。近年は社員の返済を肩代わりするため、企業の中で「奨学金返還支援制度」が広がりつつある。しかし、勤務年数などの条件もあり、必ずしも就職先選択のインセンティブにはなりにくい。
安心して利用する方法
では、奨学金をどのように活用すればよいのか。ポイントは「どう借りるか」と「どう返すか」を事前に考えることだ。借りる前には、年間の学費と生活費、仕送りやアルバイト収入などの収支を前提に、学内外の給付型奨学金を調べた上で「貸与型で補う最低限の額はいくらか」を見極める。また、JASSOのホームページにある返還シミュレーションなどを利用して、卒業後の毎月の返済額と期間を確認しながら「このラインなら生活費と両立できる」という目安をつけることも有効だ。
返済が始まってからは「厳しくなったら延滞する」のではなく、早めに相談することが重要。JASSOによると、18年度から22年度までに貸与が終了した本学学生2万8682人のうち、返済を一時的に抑える在学猶予や一般猶予などを利用したのは約2500人、延滞が3カ月以上となったのはわずか1・3%にとどまる。減額返還や返還期限猶予、所得連動返還など各種制度を活用し、各学部の学生課やJASSOの相談窓口に早めにアクセスできれば、多くの場合は長期の延滞に陥らずに済むことが数字からも明らかだ。
返済額などを具体的にイメージし、必要な分だけを計画的に借り、厳しくなりそうなときは一人で抱え込まず、猶予の制度を活用しながら返し続ける。安心して奨学金制度を利用するためには事前に正しい知識と情報を集め、各窓口に相談することが不可欠だ。(終)







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