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特集・連載

先生教えて 「リニア中央新幹線」

環境に配慮した取り組みを進める

いとう ひでゆき 2006年本学大学院理工学研究科博士後期課程修了。12年本学理工学部社会交通工学科(現同学部交通システム工学科)助教、15年同学部同学科准教授を経て22年より現職。

 昨年10月に東京都町田市の住宅の庭から水と気泡が湧き出ているのが見つかり、これがリニア中央新幹線の工事と関係していることがわかった。リニア中央新幹線が私たちにどのような影響を及ぼすのか、理工学部の伊東英幸教授(交通環境計画)に聞いた。

Q 建設の目的は。
A 東京―名古屋―大阪間を結ぶ、交通網の二重系化と経済の活性化です。

 二重系化を進める理由は将来の東海道新幹線の経年劣化によるメンテナンス時の運行休止対策。また、南海トラフ地震を含む大規模災害への対応もあります。東海道側を通る新幹線と山梨県の山間部を通るリニア中央新幹線の二つのルートがあれば、東西の交通手段が止まる可能性は低くなります。

 経済面においては、移動時間の大幅な短縮により社会経済効果が期待されます。東京―大阪間の所要時間が約70分と新幹線の約半分になり、リニア中央新幹線が主要駅の移動の主軸になるでしょう。これにより東海道新幹線の停車駅の多い「こだま」などの本数が増えることも予想され、今まで新幹線が停まる本数の少なかった駅の地域活性化も見込まれます。

 
Q 環境や生活への影響は。
A 現時点でいくつかの問題が発生しています。

 例えば、トンネル工事で大量に発生する建設発生土の処理方法や、自然豊かな地域での自然生態系および、南アルプスなどの地下水脈への影響が懸念されています。

 特に地下水に関しては、トンネル工事の現場周辺で地下水が湧き出し、周辺にある井戸やため池、共同水源の水位の低下や河川生態系への影響が考えられます。

 
Q 環境保全のための取り組みは。
A 管轄を行っているJR東海は、事業実施に伴う生活・自然環境への影響と保全対策についてインターネットに公開しています。

 JR東海は事業を実施するにあたり、環境に与える影響を評価する環境アセスメントを東京都・名古屋市間で約3年間かけて行いました。2011年に計画段階における環境配慮について考える配慮書を作成し、リニア中央新幹線が通る地域住民に説明会を行いました。その後、どのように環境への影響を予測、調査、評価するのかを決める方法書を作り、その評価結果や環境保全対策の実施方法などについて書かれた準備書を作成しました。この間に、住民や都道府県知事などの意見を取り入れています。

 最終的に環境保全対策を決定した中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書を作成。これをインターネットに公開しています。工事が始まり新たな影響も見られ、そのたびに地域住民への説明を行っています。

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