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特集・連載

新入生へのメッセージ~脚本家~ 中園ミホさん

濃密な4年間は私の宝

大ヒットドラマ『ドクターⅩ~外科医・大門未知子~』や連続テレビ小説『花子とアン』、昨年放送された『ザ・トラベルナース』の脚本を担当。今最も輝いている脚本家の中園ミホさん(63歳、82年芸術卒)に、学生生活の体験や脚本家として大切にしていることなどを聞いた。先輩から新入生へ贈るメッセージをお届けする。

―芸術学部に入学したきっかけは。

私は日大二高に通っていて、親からは医学部に進学してほしいと言われていました。入学当時は理数系が得意で、良い成績さえ取れば推薦で受験できると高をくくっていました。しかし、入学後にものすごく遊んでしまったのです。先生に「医学部は到底手が届かない」と言われてしまい「代わりにぴったりの学部がある」と言わたのが芸術学部でした。

―どんな学生生活でしたか。

私たちの頃は実習が花形。放送学科の花形授業は「放送実習」で、みんなで番組を制作したりカメラを回したりしていました。私はその実習で同じチームの足を引っ張ってばかり…。テレビカメラを壁にぶつけて壊したこともあります。自分はダメな人でちょっと辛いなと感じ、脚本コースなら楽そうかなと安易に選んでしまいました。もともとドラマや映画は大好きでしたので。

しかし、1年の時に母が病気になって今でいうヤングケアラーの生活になり、2年の時に亡くなりました。それからの1~2年くらいの記憶が全くないんです。それほどつらかった。でも日芸の仲間たちがノートを貸してくれたり、いろいろ私を助けてくれたおかげで卒業できました。

19歳の辛かったあの時期を、日本大学芸術学部にいたからなんとかやり過ごせたんじゃないかなって、同級生に会うたびに感じます。日芸に通っていなかったら今ごろどうなっていたかわかりません。映像に携わる仕事をしていた気はします。29歳で脚本家になりましたが、もっと遠回りしていたかもしれません。

日芸の卒業生は好きなことを仕事にできている人が多い。好きなことを仕事にできるのはすごく幸せなことですし、そういう仲間と濃密な4年間を過ごせたことは私の宝です。

―中園さんにとって脚本家とはどんな仕事ですか。

ドラマや映画は大勢のスタッフで人間を描いて、それをより多くの人たちに届けます。脚本家はその「設計図」を作る仕事だと思います。私は物事を俯瞰して見ることができない。自分と半径5㍍くらいの人の声に耳を傾けるのが好きです。これは脚本家だからではなく私の癖です。

例えば『ハケンの品格』は商社のOLを取材する中で生まれました。派遣社員のグループと話していたら、彼女らは本音を言いたがらない。そのことが気になって毎週一緒にお酒を飲むことにしました。するとある時やっと本音が聞けたのです。職場内でのセクハラの話でした。そしたらそこにいた人たちがみんな泣き始めたたんです。

立場の弱い人と強い人が同じ職場で同じ仕事をしたときに、これは必ず起きていること。その時に「あ、これはもう絶対にドラマで彼女たちの本音を書かなきゃいけない」と思って、初めてテレビ局に企画を持ち込みました。

いろんな種類のドラマがあっていいと思います。私はその中で「本音担当になろう」と思いました。仕事に疲れて帰ってきた人に、少しでも元気になってほしいなと思っていつも書いています。

―新入生へメッセージをお願いします。

まず、なんでもやってみてほしい。林真理子理事長の「やってしまったことの後悔は日々小さくなる。でもやらなかったことの後悔は日々大きくなる」という言葉。すごい名言です。だからこそなんでもやってみてほしいと思います。新型コロナウイルスもようやく落ち着きつつある中で制約も減っている。本当に行きたいところに行って、聞きたい音楽を聴いて、食べたいものを食べて…。特に日本大学はやりたいことのできる4年間を過ごせるところだと思います。

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なかぞの みほ 1959年東京都生まれ。82年芸術学部放送学科卒。広告代理店勤務、占い師などを経て88年に脚本家としてデビュー。2013年に『はつ恋』『Doctor-X~外科医・大門未知子~』で向田邦子賞と橋田賞を受賞。その他の執筆作に『やまとなでしこ』『ハケンの品格』『花子とアン』『西郷どん』『七人の秘書』など。

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