学術ニュース  2017年04月21日 19:12

■生物資源科 巻き貝 巨大津波生き延びた 遺伝子の多様性維持し

 海岸生物は津波にも負けなかった―。東日本大震災の大津波で生息数が激減した巻き貝の一種ホソウミニナが、遺伝子型の多様性を維持して生き永らえていたことが生物資源科学部の中井静子助教(生命科学)らの研究グループによって確認された。

 巨大津波が海岸生物の遺伝的多様性に及ぼす影響を解明した研究は世界でも初めてで、成果は3月10日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に掲載された。
 ホソウミニナは北海道から九州までの沿岸部の干潟に生息するポピュラーな巻き貝。ほぼ同じ場所で世代交代を繰り返すため、地域ごとに多様な遺伝的特徴を持つ。
 中井助教らのチームは2004年から15年にかけて、仙台湾周辺の6カ所の干潟でホソウミニナを採取、遺伝子情報の中にある「単純反復配列(マイクロサテライトDNA)」と呼ばれる遺伝子配列を調べた。その結果、6カ所とも東日本大震災のあった11年を境に個体数が激減したことが分かった。ところが、生き残ったホソウミニナの遺伝的多様性は、ほとんどの干潟で震災前と大きく違っていなかった。
 一般的に生物は、環境変動や感染症などで絶滅の危機に瀕した際、遺伝的な多様性がある種ほど生き残る個体が出やすくなるといわれている。仙台湾周辺は数百年周期で巨大津波に見舞われているとされており、中井助教らはホソウミニナが今回のような津波を何度も経験しながら命をつないできたとみている。
 中井助教は「ホソウミニナを例に、大津波が海岸生物にどれほどの影響を与えるのか解明することができた。研究成果が海岸に住む稀少種や絶滅危惧種を保全する突破口になってほしい」と話している。


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       宮城県・鳥の海海岸でホソウミニナなど海岸生物を採取する中井助教(手前右)ら

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