総合ニュース  2009年05月28日 19:19

■―歯― 酪酸がエイズ発症に関与 落合教授らが突き止める

 歯学部の落合邦康教授(口腔細菌学)らはこのほど、歯周病原菌が作り出す酪酸という物質が、体内に潜伏しているヒト免疫不全ウイルス(HIV)を活性化させ、後天性免疫不全症候群(エイズ)を発症させる可能性があることを突き止めた。研究成果は米国の免疫学専門誌「TheJournalofImmunology」3月号や日本版「ニュートン」5月号に掲載され、4月の国際歯科医学会総会で発表された。

 HIV感染による日和見感染の一つに重度の歯周病があることはこれまでも知られていたが、落合教授らの研究は、むしろ重度の歯周病がエイズを発症させる可能性があることを明らかにした。
 HIVは感染後、自らの遺伝子をヒト細胞の染色体に組み込み、数年から二十数年も潜伏する。最近の研究で、潜伏状態にあるHIVは、酵素の一種であるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)によって、増殖が抑えられていることが分かってきた。HDACの働きが妨げられるとHIVの複製が開始され、エイズを発症する。しかし、HIVの潜伏状態がどのように破たんするかということは分かっていなかった。
 落合教授らは、HDACの働きを妨げる酪酸がこの潜伏状態を破たんさせるのではないかと予測。名古屋市立大学の岡本尚教授、今井健一助教らと、酪酸がエイズ発症の原因となることを確かめる実験に取り組んだ。
 実験では、HIV感染ヒトリンパ球に歯周病原菌、大腸菌の培養液、それぞれの菌体、歯周病原菌から精製した毒素、酵素、各種菌体成分を加え培養を行った。培養後、HIVウイルスが増殖し、タンパク抗原が作られているかどうか、HIV感染者の血清を使って確認した。その結果、対照に使った潜伏感染HIVの最も強力な活性化因子であるサイトカイン(TNF―α)と歯周病原菌培養液を加えたグループでのみタンパク抗原が検出され、HIVが増殖していることが分かった。さらに、加える培養液が濃いほど作り出されるタンパク抗原量は増加した。
 研究グループが歯周病原菌の培養液中に含まれる物質を分析したところ、そのほとんどは酪酸で、その他は酢酸、プロピオン酸、吉草酸などの短鎖脂肪酸だった。精製したこれらの短鎖脂肪酸をHIV感染細胞に加えて培養したところ、酪酸だけがHDACの働きを阻害し、HIVを増殖させる働きがあることを確認した。
 今後は、動物実験や国際的な疫学調査を実施する予定。
 落合教授の話 細菌が作り出す短鎖脂肪酸、特に酪酸の研究に携わる過程で、酪酸のHDAC阻害作用に興味を持った。研究対象の一つがHIV潜伏感染の破たん機序の解明だった。歯周病がエイズ発症につながるのではないかという逆の発想が成果につながったと思う。日本の成人8割が歯周病に感染しているといわれ、糖尿病や肺炎、心筋梗塞(こうそく)などさまざまな疾患の因子となることは既に知られており、口腔内を清潔に保つことは重要で、全身の健康管理にもつながることを示す結果だと思う。
 酒井健夫総長(獣医疾病予防学)の話 世界中で注目されているHIV感染の臨床につながる基礎研究というだけでなく、細菌とウイルスの微生物間相互作用という視点からも大変興味深い研究だ。今後の発展に期待したい。

 日和見感染 免疫力が低下し、健康な人では感染症を起こさないような弱い病原体でも感染すること。

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