総合ニュース  2008年12月18日 19:27

■宇宙エレベーター上昇中 期待膨らむ新素材の進化

 エレベーターで宇宙まで―。そんな夢のような技術が実現に近づきつつある。11月15、16日に東京都江東区の日本科学未来館で開かれた第1回日本宇宙エレベーター会議では、理工学部の青木義男教授(安全設計工学)が理事を務める日本宇宙エレベーター協会(JSEA)が中心となって、夢の構想をピーアールした。
 

 宇宙エレベーターとは、宇宙空間と地上とを結ぶ1本のケーブルの間をエレベーターが行き来するシステム。地表にあるステーションから一番低い中継基地である「低軌道ステーション」まで1200キロ。その上の「静止軌道ステーション」までは3万6000キロ。さらに上空5万から10万キロの間に「高軌道ステーション」を設置。ケーブルの端は宇宙空間に浮かぶカウンター質量(おもり)で支える。

 ◆強くて軽い素材
 これまでこうしたシステムが実現不可能とされてきたのは、地上と宇宙を結ぶケーブルとして適当な素材がなかったからだ。エレベーターなどに使われるワイヤロープは、50キロ以上の長さになると自重に耐えきれず切れてしまう。巨大な質量のワイヤが途中で切れて落ちれば、地上での大惨事は避けられない。この問題を解決したのが「カーボンナノチューブ」という素材。理論上、鉄の約百倍もの強度があり、重さはアルミニウムの半分。仮に切れても繊維状にちぎれてクモの糸のようにふわふわと落ちる。
 その正体は直径数ナノメートルの炭素原子の同素体だ。これを薄さ約2ミリ、幅約20センチの帯状に成型すれば宇宙エレベーターのケーブルとして利用できるのだが、長くするのはなかなか難しい。これまでのところ、英国のケンブリッジ大学で作られた約2メートルのものが最長だ。ただ、時間さえかければさらに長くできるという。
 実用化には鉄の60から70倍の強度が必要だが、青木教授は「鉄の20倍の強度を実現するのにあと2年以上はかかると予想していたが、既に実現し、60倍の強度のものが10年以内に実現してもおかしくない」と楽観的だ。

 ◆降下時に発電
 エレベーターの駆動は電磁石の反発力を利用するリニアモーター方式を中心に検討されている。上昇には電力を使うが、下りるときは引力を利用。その際に発電した電力を蓄え次に上昇するときに使えば電力コストを抑えられる。

 ◆日本は世界一の技術
 青木教授らはケーブルの衝撃強度と減衰特性をさらに高めるため、防弾チョッキなどに使うアラミド繊維を混ぜたケーブルを作れないか模索している。「企業を巻き込んで開発を進めたい。その土台としてJSEAを立ち上げた。高い品質を追求するには日本の技術は不可欠」。

 ◆夢の技術アピール
 今回の会議では、エレベーターのデザインなどを競う中高校生向けのコンテストも実施した。本学の付属3校を含む10チームが出場。デザイン賞に日大一高1年生の石田理久さん、スピード賞に千葉日大一高2年生の八巻佳史さんの作品が選ばれた。青木教授は「この子たちに将来、宇宙エレベーターを実用化してもらいたい。そのためにもこの技術を楽しく学んでほしい」と期待を込めた。
 「ちょっと宇宙まで行ってきます」。そんな会話を交わす日も遠くないかも知れない。

トラックバック・著作権・リンクについて
トラックバックURL

この記事のトラックバックURL:

このサイト内における全ての文章・画像・図表等の著作権は日本大学新聞社に帰属します
Copyright (C) NIHON UNIV. PRESS All Rights Reserved.