連載・コーナー  2008年04月25日 22:49

■学生記者発 スコープ アンバランスを愛す

 商学部の近くにある、東京・下北沢は今、駅を中心に大幅な街の開発工事が進んでいる。周りは工事用の白いシートに覆われ、わたしの知らない“下北”が着実につくられている。大学の仲間とよく待ち合わせる南口の広場も、いずれはなくなると思うとどうしようもなく寂しくなった。

 今回の工事は小田急線の複々線化のため行われている。併せて周辺の細い路地や広場も整備し、広い道路をつくる目的でも進められている。開発に反対の声も耳にする。商店街の住民や、多くの若者が独特の外観を残したいと抗議。音楽家の坂本龍一さんやフジコ・ヘミングさんなどもその1人だ。それぞれの胸にある“下北”を思い、切なくもうれしく思った。
 千葉県佐倉で高校時代を過ごしたわたしは、大学入学後から頻繁に下北沢に通うようになった。昨年の春、クラスの何人かで初めて集まったのもここだった。それからは何かにつけてこの街で遊び、恋愛や悩みを相談し合い、笑った。ドラマをまねて自分たちの集りに愛称まで付けた。“下北”は、仲間との青春に欠かせない場所となった。
 劇場やライブハウスが多く、役者やミュージシャンの卵はみんな、この街で同じ空気を吸い、夢を目指す。そこには熱い思いがひしめく反面、街や仲間の居心地の良さに甘んじてしまう生ぬるさもある。とはいえ、すべてを青春として包み込む街の雰囲気は、若者の求めたものだった。
 そんな雑多な下北沢が好きだ。街の複雑さが、大人になりきれない若者の感情に通じるものがあるからかもしれない。この街で生まれる青春はさわやかなものばかりではないと思う。だからこそ、いびつでアンバランスな感情を大切にしていたいし、今しか味わえない青春を愛したい。
 2013年をめどに工事は完了し、この街は新しく生まれ変わる。しかし“下北”で過ごしたそれぞれの青春は、多くの人の心の中に変わらずに生き続けるだろう。

学生記者 山﨑絢子

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