総合ニュース  2007年02月03日 16:37

■文理 シルクロードの旅 96枚の写真で疑似体験

 文理学部主催の「シルクロードの風・水・人~日本に至る遥(はる)かな道~」展が昨年12月5日から25日まで、同学部百周年記念館と図書館展示ホールで開かれた。2004年の「伊能図の世界 あるく はかる つくる 伊能忠敬の日本図」展に始まった同学部の特別展は今回が3回目。人文系、社会系、理学系の全17学科を有する同学部ならではの学際的な研究成果を広く一般に公開し、年末の恒例行事としてすっかり定着した。

 同展の特色は何といっても、フロアに敷き詰めた巨大な地図の上を歩くというコンセプト。今回は、記念館1階アリーナにシルクロード全域をカバーする縦14メートル、横34メートルの衛星写真を敷き詰めた。米航空宇宙局(NASA)の人工衛星「ランドサット」が撮影した画像の中から、特に鮮明な96枚の写真を組み合わせた。全体をビニールシートで覆い、見学者は、縮尺50万分の1のシルクロードの旅を「疑似体験」した。
 また、晩年にシルクロード各地を訪れた井上靖(1907―1991)の足跡を紹介。井上の「敦煌(とんこう)」や「楼蘭(ろうらん)」などはシルクロードとその周辺地域を舞台にした歴史小説だが、井上自身が現地に赴いたのは56歳の時で、西域に関する作品の多くは文献と想像力で書き上げた。展示では、井上自身が撮影した写真のうち44枚をパネルにしたものや、現地での取材を文章やスケッチで残した「西域ノート」などを出品。全体の展示を担当した大塚英明教授(文化財学)は「シルクロードは井上のような昭和、平成を生きた現代人にまで影響を及ぼしていることを伝えたかった」と説明する。
 奈良の東大寺正倉院や法隆寺所蔵の文物が中国の長安から奈良に伝えられたことから、シルクロードに長安―奈良ルートを含めるという学説がある。同展ではこれに基づき、大宰府から奈良までの古代山陽道を「日本のシルクロード」として示した。そのほか「見ざる言わざる聞かざる」の「三猿」のルーツや、仏教の伝来とともに猫が中国から伝わったのではないかとの仮説も紹介。日本とシルクロードのかかわりについて、一味違った観点を示した。
 一連の展示は研究、教育の成果を社会に還元しようと、島方洸一学部長の考案で始めた。伊能図展では、伊能大図の複製207枚を含む214枚の複製地図を展示。05年は「地図と写真で見る日本の空襲~きく・まなぶ・つたえる」展でランドサットによって撮影された252枚の写真を組み合わせ、巨大な地図にしてフロアに敷き詰めた。今回のシルクロード展を含め、いずれも百周年記念館の広大なスペースを活用し、分かりやすい形で来場者の知的探求心に応えようとしている。
 また人文系、社会系、理学系の学科が分野の枠を超えて横断的に協力しているのも特長だ。シルクロード展では、井上靖のコーナーで国文学科の曽根博義教授(現代文学講義)が紹介文を寄せたほか「CGで見るシルクロード」のコーナーでは、情報システム解析学科がアニメーションでシルクロード東側近辺地域の風の動きを可視化したり、CG画像でシルクロードの遺跡を再現するなど、各学科がそれぞれのアプローチの仕方でシルクロードに迫った。
 大塚教授は「各学科の接点を総合的に反映している。学際的研究を示す画期的な展示で、文理学部ならではの企画ではないか」と話した。
 12月17日には学術講演会「シルクロード―古代の『道』をたどる―」と学術シンポジウム「シルクロードの環境変化」を実施。また12月20日にはモーセン・タライ駐日イラン大使が、最終日には小嶋勝衛総長が見学した。

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