総合ニュース  2006年12月19日 22:10

■残業代11.6兆円消失 経済・牧野学部長らが試算

 民間のシンクタンク労働運動総合研究所(労働総研、代表理事=牧野富夫経済学部長)はこのほど、厚生労働省が導入を目指している労働時間規制適用免除(ホワイトカラー・エグゼンプション)が年収400万円以上の会社員を対象に実施された場合、失われる残業代は年間で約11兆6000億円に上るとの試算をまとめた。牧野学部長は労働法制を崩壊させる危険があり、大幅な手直しの必要があるとの考えを示した。

 ホワイトカラー・エグゼンプションとは、年収など一定の条件を満たした事務・技術系会社員には、1日8時間を超える残業をしても対価を払わないという制度。厚労省が進めている労働法制見直しの一環で、同省の最終報告案が12月8日、厚労相の諮問機関である労働政策審議会に提出された。
 労働総研の試算は、国税庁の民間給与実態調査や厚労省が毎年発表している全労働者におけるホワイトカラー比率(55・2%)などを基に行った。
 昨年報告された民間給与実態調査によると、年収400万円以上の労働者人口は2031万人で、管理職を除くと1816万人。これにホワイトカラー比率を掛けると、1013万人が同制度の適用対象となる。
 一方、非管理職の労働者の総年収額122兆752億円にホワイトカラー比率を掛けると、約48兆1325億円。さらに、厚労省の毎月勤労統計による残業時間と所定内労働時間の割合から、残業代の比率を計算。年収総額に当てはめ、11兆5851億円がホワイトカラー労働者の残業代と推計した。
 労働総研は、この制度が導入されれば(1)残業代が不払いになる(2)成果主義に走り過労死が増加する(3)労働者を守る労働法制を崩壊させる―などとして反対の立場をとっている。
 厚労省の最終案は同制度の導入を明示してはいるものの、年収の基準までは示さなかった。400万円以上の年収があるサラリーマンを対象とするとの案は昨年5月、日本経済団体連合会が派遣労働の規制緩和などと抱き合わせで提案した。しかし、労働界が強く反対しているほか、経済同友会も年収を基準とした一律適用に反対を表明している。
 牧野学部長は「消失額が巨大で驚いた。制度が廃案になることを望めないのなら、労働者のことを考えて法案を大幅に改善していく必要がある」と話した。

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