総合ニュース  2006年01月27日 13:48

■日大の選択 連載を終えて ~執筆者が語る本学への期待~

小嶋勝衛総長が就任してから4カ月余―。

本紙は昨年の9月(第1222号)から12月(第1225号)まで4回にわたり「日大の選択―明日の本学を問う―」を連載した。瀬在幸安前総長体制の検証から始め、財務状況、キャンパス、カリキュラムについて考えた。
志願者数が入学定員数と一致する大学全入時代を控えている今、時代を見据えた学校運営の方針、方向性の明確化が必要だ。
本学は総合性を生かしながら、今後どのような方向で変革していくべきなのか。
昨年12月末日、企画を担当、執筆した4人で座談会を開き、取材を通しての感想を話し合った。

座談会

小山 まず、瀬在前総長の「改革」に触れておきたいと思う。リーダーならビジョンを示すべきって当たり前のように言うけど、実際はとても勇気がいることだよ。就任して真っ先に「未来創造プロジェクトチーム」を立ち上げて改革ビジョンを示し、細部の検証は後日に譲るとしても、任期中に公約は実行した。その行動力については評価したいと思う。

 確かに大学の顔として「総合性の充実」をテーマに、力強く改革を推し進めてきた。そのなかでも成功した部分と、そうでない部分があると思うんだけど。

小山 2002年に完成した八幡山の総合体育館・サークル学生会館は充実していると思う。スポーツ取材でよく行くけど、あそこは運動部やオール日大サークルが入っていて、他学部生との交流の場になっている。ほかにも「遠隔授業」を導入して、学部間をつなぐことに積極的だった。

 瀬在前総長の悲願だった「総合研究大学院」の開設についてはどうかな。

遠藤 日本の縦割りの学問領域を統合するという考えは正しいと思う。それに、すべての学問分野を持っている日大だからこそ開設できたんだよ。総合力のない大学にはできない。

長谷川 でも「開設元年」だった04年、後期志願者数は定員20人に対して2人。先行きは大丈夫なの
かって心配だ。

小山 結論を出すのは、早いんじゃない。新しい領域を研究する日本初の大学院なんだから、理解されるのは時間がかかると思う。

長谷川 どんなにいいものでも、評価は数字で表されるからね。

 改革には必ず是非があると思う。でも大学の生き残り競争の中で改革を止めるわけにはいかないし、かと言って急激な改革は小嶋総長が言うように大学の体力を落とすことになる。体制が代わっても、改革をつなげていこうとする意識が大切だと思う。

小山 週刊誌が大学の財政をランク付けして「危ない大学」「本当に強い大学」と発表しているのを目にするけど、大学の財政はやっぱり大切なのかな。

 財政状態がいいことは、資金が豊富で教育・研究面を充実させることができるから、学びやすい環境の大学という証しなんだ。全入時代では財政状態が健全ということが、大学を選ぶ上で大きな選択肢の一つになると思う。

遠藤 そういえば、多くの大学で、ホームページの大学概要に財務資料を公開するようになった。

 在学生や教職員ら利害関係がある人に対して、04年に公開が義務付けられたんだ。大学もついに倒産の時代だよ。

長谷川 キャンパスを一つにするのが、日大の問題を解決するのに一番早いって言うよね。

遠藤 統合すればいいなんて言う主張は、もうやめるべきだよ。分散したままで何ができるかを探る方がよっぽど建設的だと思う。

 いまだに「統合できる」っていう幻想を学生や教職員が抱いているから、キャンパス整備が進まないんだと思う。「分散してていいんだ」って、逆に居直って考えれば、案外新しい日大の形が見付かるかもしれない。

長谷川 でもキャンパス間の物理的な距離が、学生の一体感を阻む心理的な距離になってるのは事実だよ。

小山 それに世間も日大が大きいことは知ってるけど、実体はイメージしづらいと思う。

 東大は赤門、早大は大隈講堂っていうように、建物から大学を思い浮かべることはよくある。単純だけど、大切なことだよ。

長谷川 そういう意味でもお茶の水キャンパスには、全学の核となる建物が必要だと思う。「あれが日大のシンボル」って言える建物ができれば、イメージは統一されるよ。

遠藤 外見はもちろんだけど、中身も大切。いくらシンボリックな建物ができても、学生に有効活用されて親しまれなかったら意味がない。全学部の学生が自由に使える場所にするべきだと思う。

 卒業したときに「自分は専門分野の勉強をした」って実感を持てない学生が増えてるみたいだけど。

遠藤 これから始まる全入時代を控えて学力の低下と学生のニーズに応えるために、専門教育の教養化が進んでいるんだ。

長谷川 そうなるとゼネラリストは出ても、スペシャリストが出にくくなるね。

小山 学部・学科の新設も最近多いよね。福祉やデザイン系とかは時代の要請にかなったもの。だけど「生活環境マネジメント」のように、学科名を聞いても何を学ぶのか分からない学科もある。

遠藤 カリキュラムは、一般教養と専門教育が車の両輪のようなものなんだ。大学側も学生のニーズに応えることに、あまりにも重点を置いた編成は問題があると思う。
座談会はテーマごとに議論が沸騰した


 2005年9月20日(第1222号)
 第1回「瀬在体制の検証」
 小山 慶子(法・新聞3)

 
本学は以前から「総合性の発揮」が大きな課題となっています。こうした中、瀬在前総長は実行力のある人だと思いました。NUBIC(日本大学産官学連携知財センター)の開設など、目に見える形で総合性の充実に努めたからです。積み残した課題もありますが、それ以上に実績を評価すべきだと思います。

 2005年10月20日(第1223号)
 第2回「財務状況の検証」
 東 真一(法・政治経済3)

もし、本学の財務状況が「盤石なのか、危機なのか」と問われたら、これほど困る質問はないと思います。少子化に加えて18歳人口の減少など、現在大学を取り巻く環境を考えれば、大学経営は厳しさを増していくでしょう。今の財政基盤をより強固なものにして、これからも本学の誇る教育・研究活動を充実させてほしいです。

 2005年11月20日(第1224号)
 第3回「キャンパス」
 長谷川 大悟
 (理工・社会交通工3)

本学の歴史とキャンパスの成り立ちが複雑に絡み合っていることに驚きました。本学は他大学と比べて分かるように、中核となる建物がありません。小嶋総長の掲げる「コンペイ糖スタイル」。その核にあるケシの実のように、全学の核となるような建物が必要ではないでしょうか。お茶の水キャンパスの開発計画に期待しています。

 2005年12月20日(第1225号)
 最終回「カリキュラム」
 遠藤 望(法・新聞3)

最も大きな問題は、大学側だけではなく、わたしたち学生にもあるということを実感しました。それは、学生が目的意識を持って科目を履修しなくてはならないということです。そうしなければ大学側の理念も無駄になってしまいます。単位を取得しやすい科目を「食いつぶす」ように選択していてはいけません。
取材を終えて

「提言」 

 今こそ大学のブランド力向上を
       大学全入時代を控えて

編集長:東 真一

 いまベストセラーになっている「下流社会」(光文社)。上流か下流か、世間は自分の階層にやたら関心があるようだ。大学における勝ち組・負け組論も、この単純な階層心理と通じるものがある。果たして本学は、どちらか。

 大学全入時代が目前に迫った。2005年の萩国際大学(山口県)の経営破たんは、大学淘汰(とうた)時代の到来をリアルに示すものとなった。今後は受験生が集まる人気校と、定員を割り込む不人気校の二極化が進むといわれる。大学は「勝ち組」と「負け組」の階層論に、いや応なしにさらされることになるだろう。「中堅大学」といわれる本学も、岐路に立たされることになる。

 文部科学省によると、各大学が財政基盤を固めようと経営の安定に試行錯誤する中、国公私立大は00年度の649校から毎年増え続け、05年度で726校になった。「生き残るのではなく、勝ち残る日大でありたい」。小嶋総長は、激化が必至の大学間の生存競争を勝ち抜く強い意志を示した。

 本学の志願者数は1996年度、2年ぶりに13万人台を回復して3年連続トップに立った。しかし翌年、翌々年合わせて約2万4千人の大幅ダウンに陥った。少子化が進行し、大学受験者も減少の一途をたどる中、減少傾向に歯止めが掛からなくなった。02年度は5年ぶりに増加へ転じたが、それでも約8万9千人と、往年の勢いは影をセンめた。

 05年度も対前年度比マイナス約7千人で、ついに8万人を下回った。本学はこの間、受験生を5万人失った。人気低下の現状は教職員だけでなく、わたしたち学生にも危機感を与えている。

 なぜ志願者が増えないのか。14学部84学科を擁する本学は、受験生が望むあらゆる学問・研究分野を網羅しているはずだ。であれば、人気低下の遠因は大学のイメージによるものなのかもしれない。企業においても大学においても、ブランド価値は、目を凝らしても見えにくい資産だ。しかし受験生は、無意識のうちに目を凝らし大学をブランドで判断するだろう。

 大学のブランド価値を高めることは、一般企業よりもはるかに困難が予想される。企業ならばヒット商品を開発することで、一挙に名前が売れることもあり得る。大学においては知名度や偏差値がものを言う。これは一朝一夕に実現できるものではない。

 明治学院大学では「ブランディングプロジェクト」というユニークな施策をおととしから実施している。この趣旨を大塩武学長はホームページ上で、こう説明している。「大学の優れた部分を社会に見せることを通じて、大学のブランド価値を高める」。そのために、学外からアートディレクターで有名な佐藤可士和氏を招いた。同氏がまず取り掛かったのは、伝統ある大学のロゴマークとスクールカラーの一新だった。佐藤氏は「すべての大学関係者、ひいては社会から愛され、正しく評価されていく」という願いを込めたという。すべての大学関係者が大塩学長の言うように「そこに学んだことを誇りにしたい」と思ったとき、このプロジェクトは実を結ぶ。

 本学小嶋総長の戦略キーワードは「コンペイ糖スタイル」だ。各学部の得意分野をその角のように突出させ、他大学の類似分野に対抗させる戦略だ。学部に個性を持たせるのは良いことだ。本学は教育、研究、スポーツと、すべての分野での「満遍なさ」が、逆に個々の良さをぼかしてはいなかったか。「角」を明確にすれば、受験生も選びやすくなる。現状を打破する上で、魅力ある“学部づくり”に勝るものはない。これを本学にとっての、ブランド力向上の糸口にしてほしい。

 小嶋総長は年頭会同で私立大学等経常費補助金について、法人本部の確保率を50%にとどめ、部科校が負担していた法人費の負担率を5%減らすことなど、部科校のさらなる発展のための財政戦略をあらためて強調した。

 本学には「勝ち組」になってほしい。卒業しても「日本大学」で学んだことが誇りだと、胸を張りたいからだ。

 箱根駅伝で、本学は序盤の出遅れを盛り返し、最後には3位につけた。この底力に、大学全入時代という難局を乗り切る本学の姿を重ねたのは、わたしだけではないはずだ。

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