学術ニュース  2005年12月19日 15:16

■医・乗り物酔い原因解明へ前進

 動揺病(乗り物酔い)のメカニズム解明を目指している医学部の平柳要・助教授(社会医学講座衛生学)を代表とする研究グループはこのほど、乗り物酔いの自覚症状が出る前に副交感神経の活動に一定の変化が現れることなどを突き止めた。こうした変化を事前に察知できれば、酔い止め薬に頼らず乗り物酔いを予防することが可能になる。テレビゲームに夢中になっているときに起こる「バーチャルリアリティー酔い」や、宇宙飛行士の6割以上がかかるという「宇宙酔い」の予防など、幅広い分野での応用が期待されている。

 研究グループの一員である老沼みゆ紀さん(2005年大学院医学研究科修了)が学術誌「宇宙航空環境医学」に投稿した学位論文「仮想現実による視覚刺激で惹起される動揺病様症状に先立って現れる心呼吸機能、心拍変動ならびに胃電図の変化」は、第51回日本宇宙航空環境医学会大会で研究奨励賞を受賞した。

 従来は、乗り物に乗って酔う時には交感神経の活動が高まるのではないかという仮説が有力だった。しかし15人の被験者にシミュレーションビデオを見せ、人工的に乗り物酔いと似た症状をつくり出す実験を行ったところ、症状出現前には交感神経の活動の上昇は見られず、むしろ副交感神経の活動低下が観察された。交感神経は緊張した状況で活性化し、副交感神経は逆にリラックスしているときに活発化する。両者は、片方の活動が高まると一方は下がるという拮抗(きっこう)関係にあるためだが、乗り物に酔ったときにはこの関係が乱れ、自律神経失調状態に陥る。

 現在のところ乗り物酔いの予防には予防薬をのむしかないが、主成分の抗ヒスタミンなどの作用で中枢神経の働きが鈍り、眠気、だるさなどの副作用が避けられない。平柳助教授らの研究が注目されるのは、副交感神経の活動を低下させないように維持する方法が見つかれば、薬に頼らず乗り物酔いを防止できる可能性が開けるためだ。

 平柳助教授らのグループはこのほか、特定神経をコントロールすれば吐き気などの症状が抑えられるメカニズムも解明しつつあり、現在、大手自動車メーカーに先端技術共同研究として提案しているという。

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